勘違い
はきはきと威勢よく取材してきた彼女にしては、おっとりした声。
その彼女が、自分と同じ年くらいの少年に、刃を突き立てられていた。
彼女は倒れる瞬間にジルトを見て。
「 」
そこから、ジルトの記憶は途切れた。
「……み、きみ! 大丈夫か!?」
体を揺さぶられて、ジルトは目を覚ました。
「あれ、俺……」
目を開けると、そこはやはり、ひび割れた床。ジルトが体を起こせば、警邏の制服を着た男がほっとしたように声をかけてきた。
「どこか痛む?」
「頭が少し……」
「……何があったか、話せるかい?」
なぜか、警邏官の彼は悲痛な顔をしていた。どうしてだろうと考え、ジルトはやっと、覚醒した。
そうだ、ソフィアだ! そばには社長も倒れていた。
上がる血飛沫。突き立てられる刃。いつかどこかの光景を思い出したジルトは、だが、違うことをわかっていた。
床に座り込んだままそちらを見れば、案の定、二人は忽然といなくなっていた。
「王都通信社の二人が……俺と同い年くらいの、黒髪の奴に刺されてて……」
考え込んだせいで、言葉が疎かになったジルトだが、警邏官は違う意味にとったらしい。ジルトの背中をさすってくれる。
「わかった。辛かったね。もうここを出よう。話は後日だ」
気遣うような警邏官の言葉に、ジルトはとりあえず頷き、立ち上がる。それにしても、この警邏官は親身にしてくれる。
ーーソフィアさん達の狙いはわからねえ。だけど、何か……。
王都通信社から出る時、警邏官に背中を押されながら、ジルトは中をもう一度振り返った。振り返って、愕然とした。
吐き気が込み上げてきて、ジルトは口を手で覆った。
床に張り付くべっとりとした赤は、気を失う前にみたものとは、まったく異なるものだった。
「『あ、これ、そうじゃないやつだ』」
彼女の言葉を口に出して、ジルトは。
王都通信社に起こった悲劇を、ようやく悟ったのである。




