禁断の兄妹設定
正気に戻ったのは、ある程度経ってからだった。
「ていうか、へ……あんた式典の主賓じゃん。なんでこんなところにいるの」
ジルトとしては、当然の疑問を口にしてみたわけだが、リルウの答えは簡潔だった。
「貴方と同じ」
つまり、サボりであるという。
「同じサボり仲間の貴方だったら、私を式典に連れて行くことはないだろうとの判断で、貴方に助けを求めました」
ジルトの金で買った串焼きを二人して頬張りながら、露店を冷やかしている最中での会話。
「いやたしかにそうだけどさ……木を隠すには森の中って言ったって、堂々としすぎじゃね?」
「私がひとりぼっちだと、高貴さは拭えませんが、二人だと貴方の関係者だと思われるようになるでしょ?」
「つまり?」
「私の高貴さがなくなり、堂々とできる」
「喧嘩なら買うぞ?」
まったく敬うポイントが見つからない女王様である。その女王様は、ちょっと夢みがちに言う。
「冗談ですよ。貴方と私では、禁断の兄妹という感じです」
「禁断いらないだろ」
「絶対要ります。恋に障害はつきものです。
それはともかく、私は城では公爵以外とは話せないコミュニケーション能力皆無の引きこもりで通っているので、街中で出会った誰かを引き込むなんて思われてないはずです。なので、彼らが探すならひとりの少女なのです」
「偉そうに言うことじゃないな!?」
ジルトが突っ込むと、リルウは、ふっと笑った。
「引きこもりを演じるのも面倒くさいです。今日だって、表向きは内政に興味ない担がれ女王様が私なんていらないんだーと悲観して飛び出した設定です」
「うん、そこのあたりは聞かなかったことにするわ」
設定ってなんだ。激しく興味を惹かれるが、聞いたが最
後沼に引きずられそうな気がする。百面相するジルトに、リルウは苦笑した。
「面倒くさいという顔をしてますね。でも私、貴方のその顔嫌いじゃないですよ。たとえ万人に拒絶されようとも私だけは貴方の顔が好きです」
「慰めてんのか貶してんのかはっきりしろ」
「褒めてるんですよ。ご褒美あげたから、今日は私のお兄様になってくださいね。お兄様になったからにはあんたは禁止。リーちゃんと呼んでください。ね、お兄様」
腕の絡ませ方が兄妹のそれではない。悪寒を感じる。
「なあ、今からでも式典に……」
「嫌です。お兄様とデートするんです〜!」
お兄様限定コミュ障解除リルウちゃん




