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だらだら不本意運命奇譚  作者: 縞々タオル
最終章その1
391/446

誰一人として

被害者の裁判履歴。


異端を嫌う過激派であるアヴェイル判事により、現在拘置所にいる『魔女の信徒』は、当然のごとく死刑判決を受けている。


裁判では、三十四名の被告が控訴と上告を申し立てているが、一人だけ、それをしなかった男がいた。現在、王都中央拘置所にいる、ゼン・カラートである。


三年前に、殺人現場にて警邏に捕まった彼は、ソマリエ裁判所にて死刑判決を受け、それを受け入れた。


「“死刑は、魔女様のお導きなのでしょう”。極まってるわね」


当時の裁判記録を読み終えたリラは、ばたんとファイルを閉じた。


「しかも、王都中央拘置所の死刑囚。彼はまだ、殺されていない」

「新聞の悪趣味な被害者予想リストにも載ってるぜ。というか、奴らの取材能力どうなってるんだよ。俺たちと同じくらい早かったぞ」


こめかみをひくひくさせながら、ランスが言うのに、リラも頷いた。


「それも、気になるのよね」


所長殺しの後、待っていたかのように、王都中央拘置所に新聞記者が雪崩れ込んだ。そして、ティエフ・ヴィクテム所長の死と、ゼン・カラートを始めとする『魔女の信徒』殺しを突き止めたのだが。


「『魔女の信徒』は大抵死刑。だけど、ウチにはまったく取材がなかった」

「裁判記録を探れば、拘置所を回るより効率的だ。さらに言えば、俺たちは、奴らと同じタイミングでゴールした」

「つまり、丸二日。分類しやすい公的書類を持っている私たちでさえ、二人とはいえ、二日だったのに」


これが示す事実は一つ。新聞社は、リラやランスに匹敵する情報源を持っている。もしくは、“既に囚人殺しを知っていた”。


「ルージュ秘書官に、手紙を書きましょうか」






よって。


彼の手元には、続々と情報が集まっていた。


ハルバによってもたらされた、易々と手を出せないのではないか、という予想。

ソマリエ裁判所の二人によってもたらされた、『魔女の信徒』殺しにおける新聞社の異常な調査能力。及び、ゼン・カラートの裁判記録。


はっきり言って、中央拘置所で殺されたのは、ただの信者だ。だが、カラートは違う。彼は、凄惨な殺人事件を起こして、その捜査を進めていくうちに、『魔女の信徒』との繋がりがわかった。


もともと、凶悪な人間である。ストリ刑務官が躊躇する、いや、彼は直接現場に赴いているわけだから、直接手を下そうとする気持ちもわかる。


だが、新聞社への情報に関しては?


これには、近々行なわれる、『魔女の信徒』の一斉摘発への牽制だという一応の理由がつくのだが、そんなことをしたら、世間の目が中央拘置所に集まって、余計にゼンを殺しにくくなるのではないだろうか。


自分がレードル・ストリだったら、とブランは考える。


新聞社にわざわざ垂れ込みなんかせずに、ゼンを殺し、ここでやっと新聞社が共通点に気付くようにする。わざわざ、教えてやったりなんかしない……。




「つまり、所長殺しと、囚人殺しまでは同じ人……その刑務官さんがやったことで、新聞への情報提供は、別の人がしたことなのでは、と言っているんです」


もはや毎日足を運んでいる学園にて。


ブランの話を聞いていたファニタは、そう言った。


「もちろん、ストリ刑務官も、新聞への情報提供は考えていたと思います。ですが、ルージュ秘書官のおっしゃる通り。それは、ゼン・カラートを殺して、所長を殺した後。新聞社の捜査状況を見てから、だと思われます」

「と、いうことは」


前のめりになるブランに、ファニタは微笑んだ。


「ええ。新聞社に情報提供をした人は、秘書官の味方と見て良いでしょう」






今日もまた、他の囚人に暴力を振るって強制退場を喰らうゼンは、自分を引きずっていく、エキスポーズ副所長を見上げた。


「私を急に、食堂に出すようになったのは、貴方の都合ですか?」

「ああ、俺の都合だよ。俺が提案した。お前を守るために。感謝しろ」

「お言葉ですが、私を食堂に出せば、負傷するものが出てきますよ」

「自覚あるのかよ、良いんだよ。お前が大勢の目に触れて、必ず問題を起こし、お前が必ず俺に引き摺られてく。それが正解なんだ」


再び入れられた独房の前で、副所長は呟いた。


「死ぬなよ」

「死刑囚に言う台詞ですか?」

「死刑までに死ぬなって言ってんだよ」


くるりと踵を返し……副所長は、


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