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だらだら不本意運命奇譚  作者: 縞々タオル
最終章その1
389/446

増援

内務省に戻ったブランは、急いで信用できる部下を呼びつけた。


後に聞けば、その興奮っぷりたるや、近頃どころか、滅多にない事態で、その部下は大いに驚いていたらしい。


が、眼鏡を押し上げて、行政局の若手は冷静に応じた。


「内務省再編に伴う、行政局の人事。特に、拘置所を重点的に、ですね」

「そう! レードル・ストリと関係があるかどうかが知りたいんだ!」


言いながら、ブランは急いで外套を羽織る。


「どこに行かれるのですか?」

「中央拘置所へ!」

「殺されますよ」


ぴしゃりと放たれた言葉に、ブランは固まる。


「相手は、貴方の推測によれば、囚人殺しを指示している犯人で、古巣の所長を殺させた疑いがあるんです。貴方が訪ねてきたと、内部犯に報告されれば、次の犠牲者は貴方です」

「だが、こうしてわかっているのに、行かないでいられるか」


こうしている間にも、囚人殺しは行なわれているかもしれない。殺されるとしても、牽制になれば……


「し、失礼しまーす」


そのときだ。ノックの音とともに、書類を持った別の行政局員が入ってきたのは。ぴりついた雰囲気を感じている彼は、そそくさと書類を机の上に置く。


「中央拘置所からの報告、置いときまーす。どうやら信用できる外部の力を借りるみたいで、それではっ」


反射的に、ブランは、彼の首根っこを掴んでいた。


「ななな、なんですか、僕、なにかしました?」

「今の言葉、もう一回」

「ちゅ、中央拘置所からの報告っす! 今回の囚人殺し及び所長殺しについて、元職員の力を借りるらしいです!」

「でかした!」


ブランと、彼を諭した局員は、すぐに書類に飛びついた。報告を持ってきた局員は、目を白黒させてそれを見ていた。


「あ、あのー?」

「古巣に帰っていたのか、ということは、君の言う通り、私は焦っていたようだな」

「しかし、大胆ですね……時期と合わせると、これではまるで、彼自らが殺したような……」

「何の話ですか?」


首を傾げる局員をよそに、ブランは思考を巡らせる。


今すぐ彼を中央拘置所にやって、それは受け入れられないと、「待った」をかけたい。だが、それをしたら逃げられる可能性が高いし、最悪、何も知らない拘置所職員を人質に取られる可能性がある。


ーーいや。


もう、人質を取られているも同然だ。彼は易々と、自分の起こした事件によって、中央拘置所へと潜り込んだ。事件の捜査という名目で。


ーーあそこにはまだ、『魔女の信徒』が一人いる。


死刑未執行の男が一人。おそらく、わざと残しておいたのだろう。


ーー捜査を手伝うために。 


だとしたら、その男を殺そうとする素振りを見せたところを逮捕したらどうだ?


ーー最悪、殺してからでもいい。 


証拠さえ手に入れば、あとは逮捕に踏み切れる。


「あの、僕要ります?」

「要る。大いに要る」


帰りたそうな局員と、比較的冷静な、眼鏡の行政局員二人の肩を抱いて、ブランは凶悪な笑みで言った。


「君たちには、増援として、王都中央拘置所に行ってもらう」

  





ガウナ・アウグストから、レードル・ストリへ。


『君の正体を、ブラン君が把握していないとはいえ、あちらには予知能力者がいる。君は、残りの男に自ら手を下そうとしているのだろうけれど、それはよした方が良い。別の刑務官に手を下させなさい。そうすれば、君に捜査の手は及ばないだろうから。

それから、君に頼みたいことがある……』



レードル・ストリから、ガウナ・アウグストへ。


『承知しました。()()()は、私が直接手を下さねばと思いましたが、リスクを考慮し、別の刑務官に手を下させます。

ご命令の件、少々お時間をいただけますか。必ずや、成し遂げてみせますので』

 





外は、最近の天気では平均より上ともいえる曇り空。


「太陽が見たいものだね」


呟いて、ガウナは筆をおいた。真夏の暑さではなく、妙にしっとりとした、けれど体に纏わりつかない暖かさだ。


すう、すう。そんな天気だから、規則正しい寝息が聞こえた。笑みが溢れる。


お気に入りの安楽椅子から降りて、ガウナは、自分の“良心”の頭を撫でた。ほのかに温かいのは、彼が子供だからだろうか。


守るべきものを前にして、ガウナは、藍色の瞳を細めた。


「邪魔者は全て消して、君の笑顔が見られるように頑張るからね」

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