乗っ取り
あまり自分の命を大切にしてなさそうな友人に激昂したハルバは、自ら魔法陣に踏み込んだ。
そして、ハルバの後に魔法陣に踏み込んだ親愛なる女王陛下は、ハルバにこう言った。
『視えるでしょ、貴方なら』
同時に、公爵の言葉が、ハルバの脳裏に蘇った。
『予知とは、いわゆる魔法における契約の結果なんだ。
人間を遥かに超越したーー仮にそれを神と呼ぼう、に働きかけ、何かを犠牲にして未来の知見を得る。』
祖父はきっと、自らの生命力を犠牲にして、予知を、神と契約したんだろう。それなら、俺は。
魔法陣が、くるくると回り始める。シンスの言葉がハルバの奥にまで届いて、何かを引き出していこうとする。それが、とても不快だ。
だけど。
ーーどうせ死ぬなら、俺は!
与えられるその不快感を、ハルバは自分のものにしようとする。じわじわと末梢から這い上がってくる死。それを餌に、ハルバは誰かと繋がろうとする。
ーー来い! 俺の方だ!
ジルトが弾き飛ばされるのが見えた。ハルバは薄く笑った。
そうだ、あの馬鹿な親友のために。俺は負けるわけにはいかない。ハルバは強く目を閉じ、集中する。
ーー視えろ、視えろ、視えてくれ!
ーーダグラスの高級な命だぞ! “お前”を喚ぶのに相応しい、価値のある命だ!!
そう、この時ばかりは、ハルバは自分の血に感謝した。自分の命を、高く見積もった。
ーーだから、“神様”!!
だが、神はハルバに微笑まなかったのか。ハルバに見えるのは、変わらずに光る魔法陣だけ。
ーーいや、ちょっと待てよ。なんで俺、目瞑ってんのにこれ見えるんだ?
ハルバが恐る恐る目を開くと、魔法陣は、依然として光りつつも……その回転は、止まっていた。
「……そんな」
かしゃん、と。何かを落とす音が聞こえ、ついでに肉を打つ音が聞こえた。




