大勝利間違いなしの賭け
死者を蘇らせること。
『アッカディヤの魔術儀式』は、なんで作られたんだと思う? 妻を失った夫の悲嘆? 妻への愛情? よくわかんないけど、俺は違うと思うね。
それは、傲慢だ。傲慢が、神のことわりを超越してるんだよ。
だって、死んだ人間の人格そのままを降ろすんだぜ。生き返って欲しいって願ってる側は、こう思わないのかな。“自分は嫌われてる”って。どうして、“自分が好かれてる”前提で、蘇らせようとするんだろう。
ようやく蘇った大切な人が、自分を罵ってきたら? これは死者だからと理由をつけて殺しちゃわないとも限らないだろ? 少なくとも、俺はそうしたね。
恋人なんて、もう三桁くらい蘇らせたんじゃないかな。でも、結果は平手打ちされたりとか、命乞いとか。死者が命乞いってウケるよね。どうせ五分も経てば、またくらやみに戻ってくっていうのにね。
暗闇、ああ、暗闇か。憧れるなぁ。俺は、暗闇に行けないから。いつだって、太陽の光に晒されて、溶けて、また帰ってきてしまうんだ。このろくでもない世界に。死にたいって願っても、死ねないんだよ、あはは。
運命も良い響きだよね。魂によって、死に方が決まってるなんてさ。羨ましいと思うよ。俺は、殺されたり、自分で死んだりだったから。俺には運命がない。
話が逸れたな。だから俺は、お前を選んだんだよ。ぜんっぜん心優しくないお前に、最高の餌を持ってきたんだ。俺がこれから言うことを快諾してもらうためにね。
いや、優しいとかどの口で言ってるんだよ。優しいやつは自分で優しいって言わないよ。
とにかく、アッカディヤの始祖がやったことは、いい線いってたと思うよ。でも、それは、成功した時点で失敗なんだ。だから、奥さん復活しなくてよかったねって思ってる。
復活の儀式は、まったくの、なんの思い入れもない他人がするべきなのさ。そうすれば、復活を願った人間は、綺麗なままでいられる。自分が“好かれていた”という傲慢はなくなって、感動的な再会になるはずなんだ。たとえ“嫌われていた”としてもね。
お前、死者を蘇らせることに抵抗を感じてないだろ。“嫌われてても別にいいや”って思ってるだろ。あ、鴉? ああ、そういう情緒もあるよってことね……表情から“嫌われてない”って自信が溢れてるぞ。
そこさ、あの人と違うのは。あの人は、最小限の儀式しかしなかった。それは、“嫌われてるかもしれない”って感情からだ。
あの人の味方は、残念なことに、あのクソ王様しかいなかった。あのクソ王様が裏切ってから、あの人は死者を降ろすのをやめた。それなら自分と同じように犯罪者を降ろせばいいって? あのなあ、あの人はああ見えて、倫理観ってものを持ってるんだよ。り・ん・り・か・ん。お前には無いものだぞ覚えとけ。いや、倫理観は良心とは違うから。やめてそこで良心アピールするの。手に入れたばかりの玩具を振りまわすガキかよ。
だからさ、死者を蘇らせることに抵抗のないお前には、報酬を払うから、ある人物を蘇らせて欲しいってわけ。そうしたら僕が殺される? 知るか、勝手に殺されてろよ。それならさ、
……ほらな、乗り気になった。
三つも教えてやったんだから、感謝しろよな。えっ、俺そんな理不尽なことで怒られるの。それはあくまで副産物だから……くそっ、なんで気付いてるかなあ!? 気付いてないところが良かったけど、まあ、それだとあの人が幸せになれないから、しょうがないか。
自分が幸せになりたいと思わないのかって? あはは、面白いこと聞くなぁ。これが俺の答えだよ。俺は、あの人が幸せになることで、自分が幸せになることに気付いたんだよ。人の幸せを見ることで自分も幸せになる。完全に、良い人の台詞だよなぁ。諦めた? そうとも言う。だけどそれの、何が悪いんだ? 効率悪いことは切って捨てなきゃ、幸せになれない。
最初から、期待しなきゃいいって思っても、人間そう器用なもんじゃないからさ。だから、なあなあに、表面上のお付き合いをして、俺の人生はそれなりに進ませておいたんだ。
? どうしてあの人に期待するかって? お前もわかってるだろ、あの人のそばには。
「英雄が、いるからさ」




