表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
だらだら不本意運命奇譚  作者: 縞々タオル
地下実験室
341/446

少し可哀想な

もちろん、彼女の余裕は、ハルバ・ダグラスの予知のもとに成り立っている。

当然、ターゴが大統領府に飛ばされることは予知済みだ、いまごろは、街中にいるチェルシーとニェルハが、ターゴを助けに向かっていることだろう……これは副大統領には視えないが、セブンスには視えなければならない。なぜなら、セブンスは、ディーチェルの願いとは全く関係ない、『千里眼』を()()()()()()()()()()()()からだ。


ーーだが、あの嬢ちゃんのことだ。油断はできねぇ。


セブンスは、上着のポケットに手を突っ込んだ。そこには、あの生意気な少年神の、体の一部が入っている。当然、聴くべきは、作戦の中心人物である、ファニタ・アドレナの心の中だが……


「なぁるほど」


突如、聴こえてきた声に、セブンスは口の端を釣り上げた。そういえば、もう一人、いた。


「お前らの作戦はわかった。いいぜ、それならとことん、追いかけっこしてやる」






風景が変わる。二人の魔術師は、同時に指を鳴らした。

といっても、セブンスの方が一回多い。ユバルと、ハルバ。人物の選定も的確といえる。王子の従者の次は、先に予知能力者を飛ばそうという魂胆だ。


だが、それはあまり意味がない。

なぜなら、ファニタ・アドレナは、セブンスが選ぶ場所を予測しているだけではない、その順番までも予測していたからだ。ハルバの予知は、パターン予測の裏付けにすぎない。彼は飛ばす順番を間違えた。


「読まれています」


不快そうに言う、レデン副大統領。


「あっそう。神の左目って、ダグラスみたいに決定権ないから、暗闇にはなんねえのな」


と、飛ばし損ねたハルバを見ながら言うセブンスは、それでも驚いたような顔を見せないが。


ーー競り勝った! 


リルウは、心の中で歓喜した。予知に予測が勝っている! 


人、場所ともに、あのセブンス・レイクの考えを見通しているのだ、このファニタという娘は!


ーー私の未熟な魔術でも、補完してくれる人がいれば


「この俺に勝てるはず? 甘いよ」


景色が変わる。




セブンスが指を鳴らした数は一回。


「お前のことは、トウェルの子供ぐらいにしか思ってなかったけどな、訂正するよ。お前はいっぱしの魔術師だ」

「……」 


それなのに、ハルバ・ダグラスが消えた。指を鳴らした数は、聞こえた数は一回のはずなのに。


ーーそうか。


「私が来る前に……」

「転移魔術を発動しておいた。ちょうど、ハルバ・ダグラスが着地するところに。転移魔術は落とし穴。よく言ったもんだ。褒めてやるよ、リルウ・ソレイユ。お前、俺に“アドバンテージを取らせよう”って思わせたんだぜ? もっとも、それはお前だけの手柄じゃあねえけどな」


ーー敵わない。


「じゃ、場所を移そうか?」




一人、また一人と減っていく。


「あと、三人」


実に楽しそうな声のセブンスが、リルウと、ユバル王子と、そして、ジルトを見る。空の月は高いところまで上っていて、生ぬるい夏の夜風が肌を撫でていった。


「もう、良い子は寝る時間だ」

「少し前まで子供だったくせに、何を大人ぶってんだか」 


ジルトに半眼で指摘されたセブンスは、髪をかき分けようとして、動きを止め、「ははーん」としたり顔。


「さてはお前、今のイケメンの俺より、前の純粋無垢そうで可愛い美少女の俺の方が好みだったのかぁ?」

「なんでそうなるんだよ」

「……セブンス殿?」


弟子を揶揄うことに精を出しそうになったセブンスを、不安そうな声でとどめる大統領。


「わかってるよ」


そんな大統領に、雑な態度を取り、セブンスは、ぱちんと指を鳴らした。






足元が、青く光った。


気付けばジルトは、地面に座っていた。髪をかきむしる。


「あんのアホ師匠、本当に弟子飛ばすか?」


立ち上がり、ジルトは、街を見下ろすことのできる場所まで歩いていった。 


「あった」


この地点ならば見えるはずというランドマークを見つけて、クラスメートの少女の予測の正確さに舌を巻く。計画は順調だ。


「それにしても……」


転移魔術をかけられた時に、聞こえた声は、誰の声だったんだろう。


ーー“ふしあわせになりたい人間の声だよ。お前は聞かなくていい”。


「でも、聞こえた以上は」


ーー“声に応えるのは、ただ一人にのみだ”。


「ただ一人って?」


ーー“決まっているだろう”。






か細い灯りに照らされて、ガウナは渋々目を開いた。


「……誰だ?」


暗闇、ぼんやりとした視界。その中に映るのは、


「ああ、君か……そういえば、君が残っていたね」


その人物は、嬉しそうに頷いた。ガウナは、くあ、とあくびを一つ。


「あそこから移ってきたのか、ちょうどいい、それなら、二百人ちょっとは簡単だね……」






さて、かの魔術師様は、上手くやってくれるだろうか。いいや、上手くやってくれなければ困る。そうでなければ、教えた意味がない。


「私も、血生臭いのは好まないし」  


なにより、王子なんて殺させたら、弟がこちらを軽蔑の目で見てくることだろう。


ごろん、と、レオンは草地に寝転んだ。公務からの、遺体奪取に動いたので、流石に疲れた。


あとは、彼女達が、上手くやってくれるはずだ。


「少し、可哀想な気もするけれど……」


その言葉が、誰に向けられているのかは、レオンと、彼だけしか知らない。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ