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だらだら不本意運命奇譚  作者: 縞々タオル
血と白刃または赤と銀
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王家の血

突然のdis

予知とは、いわゆる魔法における契約の結果なんだ。


人間を遥かに超越したーー仮にそれを神と呼ぼう、に働きかけ、何かを犠牲にして未来の知見を得る。


“神”は予知の恩恵を、その者と同じ血が流れる者にしか恵まない。これは、魔術師にとって血がなによりも重要だからだ。






古めかしい扉の中は、案外と広かった。薄ぼんやりとした蝋燭の灯りに照らされて、三人の人物が部屋に立っていた。


一人はガウナ・アウグスト公爵である。そして、まだ信じられないことにリルウ女王陛下。もう一人は、見たことのない顔だ。

黒曜石のような瞳が印象的な男のことを、ガウナはハルバに紹介してくれた。


「彼はシンス・ゲイナー。私の同志だ」

「同志?」

「そう。私と彼は四年前から付き合いがあってね、君のことも彼から教えてもらったんだ」


四年前。そう聞いて、ハルバは胸が締め付けられそうになった。シンスという男も、そうなのか。


「ハルバ君ありがとう。これで、私は彼女に会える」

「俺の命でよければ」


真摯に頭を下げるガウナに、ハルバは苦笑する。彼もまた、大切な人をあの火災で亡くしてしまった被害者であると、ハルバは認識していた。


初めて会った時、ガウナは「会いたい人がいるんだ」と話を切り出した。そこで挙がったのが『アッカディヤの魔術儀式』。


ハルバの命を犠牲にすることを隠さず話してくれた彼に、ハルバは少なからず好感を持っている。だから、そんなガウナが紹介したシンスのこともハルバはすんなりと受け入れた。


「ところで、儀式はどこでやるんですか?」

「すでに用意してあります。こちらへどうぞ」


シンスがなんの変哲もない壁を叩き、何事かを唱える。すると、その壁には、人一人が通れるくらいの穴が空いた。その穴の淵は、虹色に光っていてなんとも幻想的だ。


「彼はとある民族の末裔でね、多少魔法が使えるんだ」


驚くハルバに、ガウナはなんてこともないように説明した。


「これを潜っていけば、儀式場に着きます。着いてきてください」


シンスはそう言って、危険性がないことを証明するかのように、率先して壁に空いた穴を潜った。その後にガウナ。続いてリルウ。


が、彼女は穴をくぐる直前に足を止め、ハルバのことをじっと見つめた。


「貴方って、お兄様の友人とは思えないくらい愚かで蒙昧で愚かなのね」

「……え、もう一回言っ」

「ほら、行くわよ」


突然人形のような女の子から投げかけられた暴言に、ハルバの思考は停止する。リルウはそれには答えずに、穴の中へと消えた。


「なんで愚か二回言った!? あとお兄様って誰!?」


再び思考が戻ったハルバもまた、相手が王族ということも忘れ、そんなことを喚きながら穴へと踏み出した……。






ジルトはファニタの説明を聞いて、一つ頷いた。


「なるほど、わからん」


イラストまで描いて説明したのにと、ファニタはがっくしと肩を落とす。そんなファニタを見て、ジルトは「違う違う」と手を顔の前で振った。


「どうしてそうなるのかがわからんって意味だよ。特に最後の方。びっくりだわ」

「そこのあたりは、魔法が“神”との契約だということを考えればわかるわ」

「わかりません」


ぷんすか怒るファニタを宥めて、ジルトは言う。


「まあでも、それならハルバが息巻いて言ってたことは理解できるな。なるほど、それで“火事で死んだ人たちが生き返る”とか言ってたのか」

「理論上はそう。だけど、それは失敗続きよ。そのために、王都では何回も火事が起こり、『火から国を救った物語』という項目が英雄譚集成に載るようになった」


ファニタの顔色は、青ざめていた。まあそれはそうかとジルトは思う。問題は、もう一つの結論。


「大元は、薔薇の魔女だったってわけだな。で、今回『アッカディヤの魔術儀式』が成功すれば、王家の血を揺るがしかねないってわけだ」

「おとうさ、父が論文を完成させなかった理由ね。そう、その儀式の成功自体が、リルウ陛下が魔女の血を引いていることの証左になる。同時に、英雄アルバートの話を、完全に否定できなくなるの」


眉唾物だとされていた御伽噺が、ホンモノになる。想像よりも大きな邪悪を引き連れて。


「王家の血が揺らげば、王国の崩壊を手ぐすね引いて待ってる隣国の方々が嬉々として攻めてくるってわけだ。なんつー厄介な儀式。成功しても失敗しても詰みじゃねえか」


ジルトは両手のひらを上にして、やれやれと首を振る。


「そう。だから、私たちはこの儀式を止めないといけない」


頷くファニタの青い瞳には、強い意志があった。


「正直、『アッカディヤの魔術儀式』を見てみたい気持ちはあるけど」

「おい」

「薔薇の魔女が復活したら、何が起こるかわからないし」


うん、と自分を納得させるようなファニタに、ジルトはジト目を向ける。大丈夫かこいつ、天才ゆえにマッドな方向に行ってないか?


「それより! どうやって止めるか、よ! 儀式を止めに入るっていったって、ハルバのことを説得しなきゃいかないし、そもそも、あそこに行くには学園の外に出て、クライスさんの目を欺かないといけないし」

「その点に関しては大丈夫だ」


問題点を指摘するファニタに、自信満々に言い切るジルト。


「論文の結論聞いてわかった。ハルバのことは説得できるし、俺の師匠はここの卒業生だからな!」

「さっぱりわかんないんだけど」

「まあ俺に任せとけって!」


明るく笑いながら、ジルトは決意した。


薔薇の魔女は復活させないし、あの大火で死んだ奴らも復活させない。()()()()()()()()



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