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だらだら不本意運命奇譚  作者: 縞々タオル
地下実験室
339/446

予知と予測

共和国首都、南区。


王国と変わらない賑やかな通りを、ジルト達は歩いていた。


「私たちがするべきは、王国と共和国で起こっている出来事の擦り合わせだと判断しました。ハルバの予知と、リルウ陛下の“抜け穴”。それがあれば、誰よりもアドバンテージを得ることができますから」


説明しながら、ファニタは、大統領府から密かにとってきた地図に、ペンで何かを書いている。


「ここにいるハルバは、名前と顔さえわかれば、その人物の次の行動を予知できます。勿論、死者を復活させる『アッカディヤの魔術儀式』を使われれば別ですが、セブンス様に限ってはその心配をする必要もないでしょう」

「なんでだ?」

「もうトウェル王とは決別したから」


隣を歩くジルトの問いに、実に簡潔に答えてくれる。


「“最後の最後にチャンスを与えた俺がバカだった”。彼はそう言ったんですよね?」


ファニタは、後ろを歩くアントニーを見た。アントニーは戸惑い気味に頷く。


「でも、それってちょっと違う気がしたんだよな。単に儀式で復活させるのをやめるっていうより」

()()()()()()()()()()()()()()。ですが、これはまだ、説明する時ではありません。副大統領は、予知能力を持つ『神の左目』を持っていると、ソフィアさんが言っていましたから」 


説明している間にも、ファニタは、ハルバが予知したセブンスの場所を……レデン副大統領の居場所の特徴を聞き続けている。


「流石はセブンス様。特定しにくい場所を選んでるわね」


覗き込むと、四箇所に印がつけられている。彼女は、それまで行ったこともない外国の地図の中から、セブンス達がいるであろう場所に見当をつけているのだ。


「王国と共和国の状況を擦り合わせることで、片方にしか属していない人の言い分を覆すことができます。たとえば、王国にいる人々は、リルウ陛下によるユバル王子を使った工作の段階までで情報が止まっています」


また一つ、ファニタの持っている地図に印が増えた。ジルトは首を傾げた。候補がどんどん増えていく。


「ですから、彼らよりもいち早く情報を掴み、共和国をこちら側に有利な状況に導くことで、王国内部の人々の計画を狂わせることができます。共和国側もそうです。セブンス様が加担している副大統領は、共和国側の人物でしかありません。王国側の人間と示し合わせることは不可能です。今のところは」


ファニタがそう付け加えたのは、あるひとつの可能性があるからだ。ただしそれを実現するには、セブンスでもリルウでもない、空間能力を持つ者を味方にする必要がある。


予知能力は、現況や未来を知ることは出来るが、相手に伝える手段はない。二国間の認識を擦り合わせるには、実際に現地に行くしかないのだ。


「それができるのが私たちというわけです。正確には、リルウ陛下とユバル王子。一国の趨勢を決めるお二方がいらっしゃれば、私たちは誰よりも有利になります」


ファニタの声は、確信に満ちていた。また一つ、印が地図に書き込まれる。そこでジルトは気付いた。


……ファニタが地図に書き込んでいるのは、今セブンス達がいる場所ではないのだと。


「アドレナさん、やばいぞ。日が沈んでってる。遠くに視えてた大統領府が視えなくなった。次、別の場所に飛ばれたら……」

「いいえ、それで良いわ」


焦るハルバに、ファニタは、笑って空を指さした。


「今日はよく、晴れているから」






「月だ」


すべての場所を選んだとしても、必ず場所を突き止められる。驚くべき予知の結果に、セブンスはさして驚くことなくそう言った。


レデンは、背後を見た。先ほどまで夕暮れだった空には、月が出始めていた。


「あの嬢ちゃん、俺達がいる場所じゃなくて、俺たちが行くであろう所に目星をつけてんだよ。俺たちが人目のないところを選ぶことを想定してな。必然、建物のないこんな場所になる。よおく空が見える、こんな場所にな」

「……その嬢ちゃんとやらは、やはり、なにか魔術を使っていたり?」

「いや、あれは天然物」

「てんねん……」


ぽかんとするスェル大統領。レデンは、故郷で人知れず育っていた化け物に何がしかの感情を抱いてしまう。


「場所を予測されたら不利。だが、確実にあっちが来るとなりゃ、罠の張りようもあるもんだ」






ーーと、共和国にて、セブンスと、ジルト達の戦いが始まろうとしているとき。


アレリア監獄にて、ガウナ・アウグストは、夢の中にいた。


もう暗闇には飽き飽きとしていたが、閉じ込められている以上はしょうがない。できることといえば、精神を磨耗しないように眠る事。


幸い、ガウナはどこにいても眠ることができる。あの肥溜めで暮らしてきただけあって、精神の太々しさには定評がある。


「むにゃむにゃ、ここが僕たちの始まりの場所だよじるとくん」


なにやら幸せそうな夢を見て、ガウナはふふっと微笑んでいた。


「魔女のしゅくふくって、どこまで効果があるんだろうね? 少なくとも歴代のどらがーぜはぁ……」


寝言でも幸せそうなガウナ。


鉄格子の向こうに立つ人物は、褐色の瞳を闇に沈ませていた。


「……少なくとも、貴方に祝福はありませんよ。アウグスト公爵」


その人物が酷薄な言葉を投げつけて去ろうとも、ガウナは気付かない。彼は今、夢の中である。


とってもとってもしあわせな、夢を見ていたのである。


「れいです院長のけんきゅうによるとね、運命はかえられないんだって。


ちに呪いをかけたとき、魔女はちゃんとかんがえてたのかなぁ。僕ならたえられないんだけど。


だから、じっけんをする必要があるよね」


くすくすと笑いながら、


「本当に、彼女はじさつするかどうか。運命はかえられるのかなあ? 変えられたらいいな。だって




えいゆうと同じ死に方をされたら、僕は死んでも死にきれないよ」


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