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だらだら不本意運命奇譚  作者: 縞々タオル
天秤と木槌(第三審)
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彫像の庭

広い庭に、彫像が、そこかしこに立っている。いや違う、これは人だ。人が、凍らせられて、そのままの姿で立っているのだ。


「陛下……」


非難の目で見ると、ぶんぶんぶんっ、と目の前の人物は首を横に振った。


「あんなのと一緒にしないで。一時的に凍らせているだけだから、ほらっ!」


ぱちん! その音と共に、彫像達は、生身の人間に戻ったのであった。 






ブランと二人きりだった馬車に、行政局長官と、警邏局長が増えた。ブランが、“とある組織の殲滅”とやらをちらつかせ、馬車に引き込んだためである。


「君たちは、どうしてここに?」

「わかりませんか」  


なんだか無愛想な警邏局長。内務省ごと、こき下ろしたことを怒っているのだろうか?


「貴方が外患誘致などを企てたがために、若造達が結束する機会を与えてしまった。私たちは、それを止めに来たのです」


隣に座る長官に目を遣ると、頷いて、


「部下達を誑かし、我々の領分を侵そうとするそちらの秘書官殿にも、一言言っておこうと思いまして」


長官は一時期ガウナの犬だったが、腐っても政府高官。一筋縄ではいかず、警邏局長は、犯罪者を相手にするだけあって、妙な貫禄がある。 


「誑かすなんて、人聞きが悪い。私は、未来ある若者達の志の美しさに感動し、少し助言を与えただけですよ」


そんな二人の非難がましい視線を、ブランはさらりと流した。 


「それに、先ほどもお話した通り、今回のアウグスト公爵の逮捕は口実です。私はただの秘書官ですよ、それも、近く辞任する予定のね。逮捕の権限はありません」


ーーよく言うよ。


警邏局と行政局の制服を着た人間を背後に並べておきながら。リラとランスの時とは話が違う。 


「それに、公爵はご自分で私たちに着いてきてくださいました。計画のことをご存知だったのでしょう」

「それは……本当ですか?」


行政局長官が、ガウナの方を見てくる。ガウナは、「ふっ」と意味深長に笑い。


ーーもっと粘れば良かった……!


心の中で後悔していた。ソフィア殺害事件の裁判を終わらせられるという、甘い罠に引っ掛かった末路である。


ーーもっとジルト君に、


咳払いの音が聞こえた。ブランが向かい側から、半眼でこちらを見ていた。


「ああ、わかっていたさ。あの組織には、私も目をつけていたからね」

「さすがのご慧眼です。『魔女の信徒』を壊滅させる計画に、気付いていらっしゃったとは」


わざとらしい褒め方が鼻につく。背後にあの太眉がちらついた。予想はしていたが、『魔女の信徒』?


「『魔女の信徒』というと、教祖が処刑された組織ですな。まだ残党がいたということですか?」


これに反応したのは、できたのは、警邏局長。長官の方は、ガウナこそが魔女の生まれ変わりだと知っているので、驚きを声に出さない。ブランが、そんな二人の反応を見ている。


「ええ。ですが、それは表向きの話です。『魔女の信徒』の教祖は、実はまだ生きているのです」


いや、もう死んでいるはずだ。シンス・ゲイナーは、ガウナが授けておいた自死用の魔術で死んだ。交わした契約が切れていることからして、それは間違いない。


ーールージュ秘書官は、それを知らないのか?


「残念ながら、彼は王都の外に脱出したらしく、彼を捕まえるのには骨が折れそうです」


ーーいや、これは知っている方だな。


余計な策を企てるなとでも言うように、ブランはガウナに目を向けた。


「ですが、これを機と捉えましょう。彼が王都を離れている間に、王都から、『魔女の信徒』を一掃するのです」

「それを、我々に話した理由は?」


警邏局長が訊くと、よくぞ訊いてくれたとばかりにブランが頷く。


「お二方は、『魔女の信徒』の信者ですか?」


これには、二人とも首を振る。


「それが答えです。信用できるのは、あなた方しかいません。ですから、お呼びしたのです……まずは、王城関係者から手をつけようと思いまして」

「まさか」


驚いたような警邏局長と、苦い顔をする行政局長官。


「我々の組織にも、信者がいるというのですか……!」






ラテラが潜伏先として選んだのは、ディーチェル邸だった。


ディーチェル邸は、火事の前では貴族の屋敷が軒を連ねていたが、火事の後には貧民街となってしまった場所にある。


そんな貧民街にあるだけあって、防犯のため、堅固なつくりになっている。


はすだが。


「よく来ましたね、ラテラ・ルシウス」


せっせと侵入者達(元彫像)を縛るレオン(外務大臣)を背景に、女神もかくやの笑みを浮かべるリルウ(女王陛下)。


堅固なつくりになっているはずが、複数人の侵入を許してしまった。ラテラは、危うく教祖の遺体を落としそうになった。


「あの柵を飛び越えて、有刺鉄線を掻い潜ってきたというのですか」

「そこの男達はね。私には、これがありますから」


ぱちん。リルウが指を鳴らすと、虹色の枠が、何もない空間に現れた。“抜け穴”だ。


「入り口でこれを使い、中に入ったというわけです」

「……」


やはり、魔術は人智を超えた技である。人を凍らせて、解凍(?)したことといい、この女王様も、間違いなく化け物の一人。


「貴方がここに来ることは予想していました」


ラテラは身構えた。予想外の出来事。だが、その予想外を読んでいた人物がいる。次の彼女の言葉は予想がつく。


「その教祖の遺体、私にくださらない?」

「お断りします」


ラテラは、地面を蹴った。


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