表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
だらだら不本意運命奇譚  作者: 縞々タオル
ふこうものと妥協の涯
286/446

手に入れたもの

『この俺を床に転がすまで成長するなんて嬉しいよ』なんて言おうと思ったが、そんなこと言ったらジルトに迷いを与えるし、なにより、自分にも迷いが生じる。だからセブンスは、事実確認をするだけにとどまった。


期待通り、ジルトは、セブンスのことを嫌いと言ってくれた。


自分で招いたことなのに、目の前が真っ暗になるのを感じた。小さい灰色の髪の男の子が、立派になったもんだ……学園に入るまでの、およそ三年間が、走馬灯のように蘇った。


ーーそうだ、俺は、不幸にならなくちゃいけない。


俺の先祖は優しすぎた。自分が幸福になれないのなら、せめて、自分の子孫は幸福になってくれと、神と再契約を交わしたのだ。


だから、俺はそれを否定する。神に与えられた力は、どうやったって、人を幸せにしないことを証明しなくちゃならない。そのために、必要なのは、もう一人の不幸者だ。


セブンスは、ゆっくりと立ち上がった。ジルトが、警戒心をもって見てくる。頭の一つでも撫でてやりたかったが、それも叶いそうにない。 


さんざんこき下ろした、黒髪の少年と、“お嬢ちゃん”扱いした金髪の少女を交互に見た。この忌々しい学園で、自分の弟子によくしてくれた二人。


ああ、黒髪の少年の方は、強敵だった。なにせ、彼は金貨持ちの上に紙幣持ちだ。本来なら勝てるはずもない。フレッドが襲った時だって、すぐに“決定権”を取り戻した。その取り戻し方が、ジルトの一言だっただけで。


フレッドを殺させてもよかった。どのみち、それを確認するために、この少年は視るだろうから。


だが、セブンスはなんとなくわかっていた。あの暗闇は、弟子が作ったものだと。さんざん王都に降りていた弟子だ。制服を着て、自分たちを襲ってきたとしても、きっと見抜いてしまうだろう。 


だから、あそこに姿を現したのは、賭け同然だったのだ。予知の分野において、親友殺しのダグラスに勝てるわけないんだから。


ーーお前さんの予知は、フレッドを救ったんだよ。


死体となったフレッドではなく、生きているフレッドを視ることになったのは。


おかげで、プランを変更しなくてはいけなくなった。ソフィアを殺したフレッドには、ガウナ以上の返り血がつき、執行官たちの茶番が、より強くなってしまった。まあ、ガウナ憎しのリラ・リブラが、うまくやってのけてくれたけれど。


そして、金髪のお嬢ちゃん。もとい、魔法や魔術を学問にまで堕とした天才、ガイアス・アドレナの娘。


魔法や魔術には、実質的には門外漢なのに、よくやってくれた。おかげで、身近な二人を殺すという“作業”を、“作業”でなくしてくれた。虚無の時間があれだけ楽しかったのは、彼女のおかげだ。


最初の予知の“穴”にすぐ気付くところなんか、同じことを企んでいたんじゃないかと、疑ってしまうほどに。


ーージルトを学園に引き留めた雌猫ぐらいに思ってたけど、これ、案外正解だったのかもな。


無謀なところがある弟子を、繋ぎ止めてくれるのは彼女だろう。さっきも、自分の前に立ったジルトに制止の声を掛けてくれた。


ーーだから。


あの夕暮れを見て思ったことを、再確認する。セブンスは、ジルトに微笑んだ。


「じゃあな、ジルト。達者でな」


それから、ファニタ、ハルバ。こいつを頼むぜ。


ま、それは言えなかったけれど。











ぱちん、と指を鳴らした瞬間、セブンスは、とある建物の中に来ていた。なるほど、これが、銀貨の力か。


こつこつ、足音を鳴らして、暗闇の中を進む。


檻の中に彼を目視して、セブンスはにたりと笑った。


いっそ清々しいまでの殺気が襲ってくる。だがそんなもの、弟子に大っ嫌いと言われたセブンスの前では、そよ風に等しい。あ、泣きたくなってきた。


今、セブンスが会話できるのは、どうでもいい相手のみだ。弟子の前で話せなかったことを、セブンスは、彼に話した。


「貴方は、何を得たのですか」


抑揚のない声だった。それくらいが丁度いい。


「俺が得たのは、魔術だ。これ、どういう意味かわかるか?」


彼は首を横に振った。「貴方のお話を聞いていると、妥協したから、ではないのですか」


「違うな。俺は、人間のきったねえ部分を寄せ集めた、魔術を手に入れたんだ」

「……」


理解できない、という顔の彼。彼の主人ならば、即座に理解して、セブンスの命を奪ろうとしてきただろう。


「ま、楽しみにして待ってろよ。お前だけは、生かしてやるからさ」



暗闇の中で、なおも闇色をした瞳を見る。彼の瞳には、たしかに、“良心”が渦巻いていた。

少し短いですが、これで締め。次章は分割かもしれません。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ