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だらだら不本意運命奇譚  作者: 縞々タオル
ふこうものと妥協の涯
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金貨と銀貨

なんか、久々に登場した気がするぞ…?

予知能力者は、万能ではない。


なぜなら、他人の命を助けることなんてできないからだ。ハルバができるのは、自分と、血の繋がった者を助けることだけ。


だからーー目の前で頭を下げる同胞の感じている無力さは、よく、理解できた。


そんなハルバに、ソフィアは、顔を伏せたまま嗚咽を漏らす。


「ごめんなさい、巻き込んで……貴方まで、汚れる必要はないのに。でも、私は無力で、どうしたらいいのか、わかんなくて……」


ジルトの話では、彼女は殺される(こう言うと語弊があるが)直前まで、飄々としていたという。だが、今の彼女は憔悴し切って、今にも命の灯火が消えそうだ。


打ちひしがれた姿が、祖父に、ハルバに、重なった。


「顔を上げてください、ソフィアさん」


どこまで協力できるかはわからない。ハルバは、まだまだ自信を持って、人を救えるなんて言えない。

けれど、助けを求めてくる人間の手を取らないことは、あの学園祭での友人の姿を見たら考えられなかった。


「正直言って、俺がどれだけやれるのかわかりません。けど」


ハルバは、笑った。


「あいつらとなら、なんだってできる気がする」 






セブンスの弟子は、話を聞いた後、それはそれは、激怒した。


「あんのクソ師匠! 戦争の次は、フレッドさんを殺すだぁ!? なに考えてんだまったく!」


そこまで怒らなくても、と思うほどに怒ってくれた。血管が切れそうなほどに。


ふーふーと息をしていたジルトは、引き気味のソフィアに気付くと、苦笑した。


「うちの師匠がすみません。あの人、素直じゃないから……たぶん、貴方を巻き込みたくなかったんだと思います。ほら、あの人、露悪的なところがあるでしょ?」


ソフィアは頷いた。たしかに、あの時は冷静じゃなかったけれど、よく考えれば、セブンスはソフィアを逃がそうとしていた……ように思える。


「だからといって、師匠がソフィアさんを傷つけたことに変わりはないです。いっしょに、師匠を殴りにいきましょう!」


ーーなんで、貴方は。


自分を騙した私に、手を差し伸べられるの。


そんな愚問が心に浮かぶが、ソフィアはそれを打ち消して、ジルトの手を取った。


決まっている。それは、彼がセブンスの弟子だからだ。セブンスがひた隠しにしている“良心”だからだ。


「ごめんね、ジルト君、騙して、ごめん……!」


もう、あんなバカなことはしない。ソフィアは、ジルトの手に縋って


「こほん」


咳払いが聞こえた。応接室に招かれたのは、ジルトだけではない。


金髪をポニーテールにした美少女は、たしか、アドレナ男爵の娘である。名前を、ファニタといったか。


青い瞳をジト目にして、彼女はそっと、ジルトとソフィアの手を離した。それだけすると、すとん、と元いた席に座る。


「情報を整理しましょうか」


彼女の言葉に、ジルトが頷く。ポケットから取り出して、机に置いたのは、例の手紙だ。


「これに、心当たりは?」 

「それは、セブンス様が、フレッドさんに書かせた手紙……」 

「やっぱり。共和国の副大統領である彼の意向を、わざわざハルバに視させたのは、ジルトのお師匠様というわけですね?」 

「え、ええ……」


頷く。さほど驚いた様子はなく、ファニタは淡々と問うてくる。


「それがどうしてか、知ってますか?」

「え、えっと。私では、“神の左目”を持つ副大統領のことを視られないから、ダグラス本家のハルバ君に視てもらうってことになって」

「でも、今まで貴方は、ハルバのことは視ることができなかったんですよね?」

「え、あれ、そう、だね?」


そういえば、どうしてハルバのことが視れるようになったのだろう。


「ーーこれは推測ですが、神様が死んだことによって、力関係が崩れたからだと思われます」

「力関係?」

「貴方とハルバの力が、同等になった」


がくん、とソフィアの力が抜けた。


「もともとダグラスに与えられていた、魔力? それが、平等になった。そうですね、予知能力を金貨とするなら、あっ、私、金貨持ってない」


懐から財布を取り出して、ファニタはしゅんと肩を落とす。ソフィアが言えたことではないが、いろいろ感情が忙しい子だ。


「俺のでいいか?」


それを見かねたハルバが、じゃらじゃらと机の上に金貨を落とす。ファニタがそれをジト目で見てお礼を言い、渋々それを使って説明してくれる。


「魔力は、原材料である金とします。ハルバはもともとこれくらい魔力を持っていて」


金貨十枚。ちらっと、ファニタがソフィアを見る。


「ソフィアさんは、このくらい」


金貨五枚。明らかな気遣いである。実際は、三分の一にも行かないことを、ソフィアはよくわかっている。なので、自分で二枚を減らして、ハルバに返却。


「……当然、金貨を多く持っている分だけ能力は強い。ソフィアさんは、金貨七枚分だけハルバに敵わないから、ハルバのことが視れないし、決定権が奪われやすい。だけど、神様に与えられていた魔力……この場合、才能といっていいかもしれません。それがなくなって、金貨の枚数は同じになった」


ファニタが、ハルバのところから九枚、ソフィアのところから二枚を取って、ハルバに返却する。


ソフィアは、目を眇めた。


この構図だと、なんだか。


「取り立てみたいだな」


ジルトが顎に手をあてながら言う。意図せずして、ハルバの金貨をハルバに返しているだけなのだが、たしかに、そう見える。


「つまり、みんなが平等に金貨を奪われたってこと」

「でも、そーしたら師匠は? ソフィアさんの予知をひっくり返したんだろ? おんなじ枚数の金貨なら、力は拮抗するはずだ」

「それなんだけどね」


ファニタはハルバに言って、今度は机の上に、金貨を一枚、隣にまた一枚、そして、銀貨を五枚並べる。


「これしか、考えられないのよね」

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