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だらだら不本意運命奇譚  作者: 縞々タオル
地下に眠るもの
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内通者の正体

ジルトがリルウとチェルシーにお帰り願ったのは、女装姿にやいのやいの言われるというのもあるが、これから起こることに、私情丸出しの二人が暴走する可能性があったからである。


ハルバの事前の予知によって、ジルトは、ケイヴとバルトの存在を知っていた。

正確には、音声は聞こえないから、二人が『円卓』とやら(これは先程のハドソンの言葉を借りるとである)かどうかはわからなかったのだが。 


だが、会話を聞いている限り、四年前にガウナの積み上げた死体を見た人物たちで間違いなさそうである。


“卒業生”という言葉を持ち出せば、反応は三者三様だった。いちばん驚いているのはやはり、『円卓』を大事にしてそうなケイヴであろうか。 


「どうしてそれを?」


疑うような目つき。視線はジルトが持つナイフに注がれている。ジルトはそれを取り返されないように、さっと背中に隠した。


さて、トランのことを話していいのやら。否、ここは世間にはびこる予知能力者万能説に乗っかるしかない。ケイヴは裏切り者に厳しそうだから。


「言ったでしょ。予知通りって。俺の知り合いに、ダグラスの本家がいるんですよ。そいつに予知してもらったんです。四年前の卒業生たちが、この文化祭に来るってね」

「僕が君を人質にとって、何をしようとしていたかは?」


ジルトはケイヴの言葉に首を振った。


「そこまではわかりませんでした。なんで俺を探していたのかも」

「……俺? って、まさか君」

「そうです。俺がジルト・バルフィンです。さっきは嘘ついてすみません」

「君は、僕にナイフを向けられている時に嘘を吐いたのか」


呆れたような目で見てくるケイヴ。


「目的がわからなかったので嘘を吐くしかなかったんですよ。もしかしたら、()()()()()()()()()()()の関係者かもしれないし」

「……そこまでわかっているのか。それも、予知の力で?」

「はい」


もちろんトランの話からである。が、そこで、ジルトは疑問を覚えた。


ーーこれ、()()()も関係してるのか?


もしかしてと思ってそれらしい言葉を口に出してみたが、当たりだったらしい。ケイヴがジルトを探していたのは、あのゴタゴタも関わっているのだろうか。


ーーいや、待てよ。


確か、トランも初めて会った時に共和国の話をしていた。これはチェルシーと繋がっていたからだが……もしも、チェルシーに話していない、別の繋がりがあったのなら? 共和国の刺客を招いた内通者は、もしかして……。


そこまで考えて、ジルトはハドソンに目をやった。


馬鹿が釣れた。アイツの言った通り。


ファニタの方に目をやると、彼女も同じ考えだったらしく、こくりと頷いた。


面倒くさいことになるのが目に見えているので、あえて言及しなかったが、十中八九、アイツとは、アイツのことなのだろう。ということは、やはりここでトランの話をするのはまずい。


「それで、どうします? エリサさんって人の生死、視てもらいます?」


なので、エリサの話に戻す。このエリサという人物が、重要人物に違いない。


ハドソンが一番最初に頷いた。決まりだ。


これで、エリサ・モルトーの生死をめぐるいざこざは解決され、もしかしたら、共和国関連のいざこざも解決されるのかもしれない。やることは増えたが、一歩前進だ。


「……さて」


問題は、ここにいる一般客たちに、どう説明すべきか、であるが。

エリサ・モルトーの生死を視る提案をしてからは、四人とも小声で話しているが、ケイヴがナイフを使ってジルトを脅したことには変わりない。


だが、こちらにはこの男がいる。


「くっだらねえ愛憎劇。金払う気にもなんねぇ」


どっこいせと立ち上がった青年は、こちらにずかずかと歩み寄ってきた。ケイヴとハドソンの肩を抱いて、にやりと笑う。それを見たバルトが、「げっ」と声を出す。


「お前、まさかマルクス家の放蕩息子か!?」

「いかにも! ったく、俺の前でこんな不快なモン見せやがって、警邏に突き出してやる。一生ブタ箱で臭い飯食ってろぶわぁーか!」


ジルトと目が合ったアントニーが顎をしゃくった。チンピラの演技が板についている彼に心の中で苦笑しつつ、ジルトは沈痛な演技。


「そんなに言わなくてもいいんじゃないですか! それは、ナイフは怖かったけど、俺も好きな人がいるからわかります。ね、ケイヴさんは、エリサさんのことが心配だっただけですよね」

「いや、僕はどちらかというと、い゛っ!?」


アントニーに密かに脛を蹴られたケイヴは、少しだけ涙目になりながら頷いた。


「そうだ。まったく、死んでるなんて嘘吐いて、エリサを諦めさせようとしたって、そうはいかないぞ」

「何にも知らないくせに、だいたいケイヴ先輩はっ」

「お前も煽ったのが悪い」

「!?」


素で応じたハドソンを、ゲンコツで黙らせたのはバルトだった。バルトは、ケイヴとハドソンをアントニーから取り返して、彼らに頭を下げさせる。


「すまんかったな坊主。怖い思いさせちまってよ」

「大丈夫です、気にしないでください。お互い様ですから」

「いや、お互い様ではなくね?」


今度はジルトがアントニーの脛を蹴る番だった。が、アントニーはそれを綺麗に回避。


「はぁー、せっかくお前のために怒ってやったのに、脅された本人が許したとなりゃ、俺の出る幕は無ぇわな」


妙に説明口調だったが、要は茶番感が出ればいいのだ。ただの痴情のもつれで暴走した青年が冷静になって、生徒に謝って、はいおしまい。『円卓』だのなんだのは、できれば記憶から消して欲しい。 


アントニーの柄の悪さが功を奏してか、ケイヴに同情する声さえ上がっている。ケイヴは恥いるように、客たちに頭を下げた。






その様子を、ちゃっかり認識阻害の結界から見ていたリルウとチェルシーは、半眼だった。


「甘い、甘いよジルト。あのケイヴとかいうのも共和国関係者の仲間なんだろうに、見逃すなんて」

「それは私も思います。あんな男、警邏に突き出してしまえば良いのに」

「でもそれを選んだのはジルトだし……ていうかあの男もだけど、一番許せないのはアイツだね。ネラルのギャングめ、やっぱり何か隠してたか。道理で共和国の刺客を根絶やしにするって言った時、動揺してると思った」


チェルシーは、リルウと繋いでいない方の右手で眉間を揉んだ。


トランが、ジルトが狙われていると言った理由。


おかしいと思ったのだーー追手自体はトランが伸したのに、どうしてジルトを見た人物がいると言い切れるのか。慎重な男だと思っていたが……今考えれば、彼は無意識に、あの場にとある人物がいたことを前提に話を進めていたのである。


そのとある人物とは、もちろん。


「エリサ・モルトー……の、名前を騙った誰か、か」


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