表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
だらだら不本意運命奇譚  作者: 縞々タオル
伯爵と復讐
20/446

生き延びる術

その青年は、こんな晴れた日に真っ黒な服を着ていて、ずいぶん憔悴しているようだった。


『会いたい人がいるんだ』


澱んだ藍色の瞳の中に狂気を奔らせて、彼はリルウを見ていた。


『君が、必要なんだ』


まるで愛の告白である。必要なんて、リルウには程遠い言葉であったから、リルウは彼に少しだけ興味を覚えた。


リルウがまだ夢見る少女でいられた時は、うっかりときめいていたかもしれない。が、あの人を亡くした後は、そんな言葉にときめくはずもなく。リルウが一番惹かれたのは、その青年の狂気。


会いたいという純粋な願いのはずなのに、どこかグロテスクで、痛々しい。


だから、リルウは焼け落ちた世界で、青年の手を取った。


この青年が、会いたい人に会えますように、と。











魔法が廃れたこの時代に、『魔女の信徒』は魔法もどきを使おうとしている。


連中は、とある儀式で魔法を再現し、薔薇の魔女を復活させ、彼らの主として国を導かせようとしているのだ。


「はあ、魔法」


正直言って、ガウナの話を聞いても、ジルトは実感が湧かなかった。魔術師の師匠を持ちながら、ジルトは魔法に親しみがない。


魔法とは、不可能を可能にする術である。だが、それは、ごく一部のものしか使えないとされている。


英雄アルバートの御伽噺の中でも、魔法が使えるのは一握りの人間のみ。だからこそ、薔薇の魔女ローズは最初、迫害の対象とされていた。魔法はマイノリティのものだったのだ。


そのことを重々承知していて、王家に降ったのがセブンスの先祖だったりするのだが、まあそれはよいとして。


ジルトの感情のこもっていない声に、ガウナは苦笑する。


「私も魔法と言われてもさっぱりだよ。だが、その方法が問題なんだ。なにせ、それは犠牲を必要とする方法だからね」

「リルウ陛下、ですか」

「他にもう一人。“贄”と呼ばれる人物がいる」

「“贄”?」


ガウナは頷く。


「本来魔法とは、魔法を使う人物の魔力を消費する。だが、その儀式では、魔法を使う人物と、魔力を提供する人物が違うんだ。

提供する人物は、“贄”と呼ばれる。“贄”は強制的に魔力を引き出される。魔力というのは、人間の生命力だから……その人物は、間違いなく莫大な生命力を消費して死に至るだろうね。そして、その“贄”というのが、君の親友であるハルバ君だ」

「あ、あいつが?」 


急に身近な人物の名前が出てきて,ジルトは前のめりになる。


「何かの間違いじゃ……」

「いいや。これは、『魔女の信徒』の教祖が言っていたから、信憑性は高いよ」


聞き逃してはならない言葉が聞こえた気がする。いや、何か妙に詳しいから、そうだろうなとは思っていたが。


「『魔女の信徒』と繋がりがあるんですね」

「四年前、炙り出してみた結果だね」

「炙り出してみた、じゃないです」

「ついでに言えば、『魔女の信徒』という名前はその時つけられた名前だ。当時、野心がありそうな“魔女信者”の人物に接触し、集団を纏めさせて、後々一掃しやすいようにした。教祖の名前はシンス・ゲイナーという」


ジルトは閉口する。何してるんだこの公爵は。


「まあ、『魔女の信徒』結成当時から組んでいるとはいえ、私たちは表向き、利害関係で結ばれているにすぎない。嘘を教えられた可能性もなきにしもあらずだけどね。だが、ハルバ君の家系を考えれば納得はできる話だ。ジルト君は、三大公爵家はご存知かな?」


唐突なガウナの問いに、ジルトは気圧されながらも頷く。


「はい。ダグラス、ドラガーゼ、ディーチェルの三家ですよね?」

「そう。ダグラスを除いて、後の二つの公爵家は、四年前の大火で滅びた。さて、そこで問題だ。なぜダグラスだけが、四年前の大火で生き延びたと思う?」


押し黙るジルト。嫌な予感が、あった。


問いを投げかけておきながら、容赦なくガウナはその答えを口にした。


「そう、当時のダグラス家の当主はね、大火を予知していたんだよ……ダグラスは、代々予知に特化した、魔術師の家系なんだ」

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ