表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
だらだら不本意運命奇譚  作者: 縞々タオル
恩人殺し(中)
195/446

復活

最初はブラン君

横柄な態度のダグラス傍流は、「刑期が一年縮まるよ」とユリズに言われたことによって、渋々写真を見て、黒瞳を光らせた。頷く。


「やっぱり死んでらあ。現在も未来も真っ黒」


アルドの右手首には手錠が嵌められている。手錠のもう片方は、重厚そうな机の脚に繋がっていた。


そんな不思議な光景と、アルドの言葉に、ブランは首を傾げた。


「真っ黒だと、死んでることになるんですか?」

「そうだよ。シリウス爺さんもご当主様も、腹黒親父も真っ黒だ。お先真っ暗、未来がないって意味さ」


ユリズがブランを見た。


「そういうことだ。ガウナ君は、死人を見つけてほしいと言っていたんだよ」






階段を上りながら、ブランは呟く。


「つまり、アウグスト宰相は、マティスの死に関与しているということでしょうか?」

「おそらく。関与しているというか、実際に手に掛けていたりするんじゃないかな」 

「それを、ジルト君に教えるなんて。怖いものなしなんですかね、あの人は」


殺したのなら、黙っておけばいいものを。なぜ、わざわざ教えようとするのだろうか。   


「これをきっかけに、警邏局が捜査を再開するかもしれないのに……」


疑問と不満は尽きない。相手にしてわかったことだが、あの宰相には、得体の知れないことがありすぎる。


まるで、深い霧の中を歩いているような、光の差さない海底を歩いているかのような気分になる。


「まあ、よっぽどの自信があるんだろうね。遺体を燃やしたり刻んだりして、証拠隠滅をした後、だとか」

「だとしても、誰かに教えるにはリスクが高すぎますよ。自分の中に秘めておけばいいのに」 

「……もしかしたら、“良心”が咎めたのかもしれないよ」


くつくつ笑いながら、ユリズが言った。


「あの若造、なかなかに勘が良いじゃないか。知らず知らずのうちに、大好きな“彼女”に“告解”するなんて」

「“彼女”……たしかにジルト君は、舞踏会で見た少女に似てましたね。どうして宰相は気付かないのかな」

「私たちが、他人だからだよ」


ユリズの忍ぶような笑いは止まらない。


「他人だから、同じだとわかるんだ。だけどガウナ君は、“彼女”を唯一無二と考えている。盲信してるとも言うね。遠い存在だと認識してるから、近くにいるジルト君が同じだとわからないってわけさ」

「先入観ですか……?」

「ま、だいたいそんな感じだね。嘆かわしいことだ」 


ちっとも嘆かわしくなさそうに言って、ユリズは扉を開いた。






警邏局長官に鍵を返し、ユリズとブランはコーヒー臭い本拠地へと戻った。


「三日だっけ? まあ、これなら保つかな」


黒革の表紙の何かを掲げて、振る。


「え、あ? あの?」


ユリズが懐に隠し、しれっと持ち出していたのは、間違いない。“資料室”にあった資料だ。  


「殺人容疑がかかってて、アルド君によって死んでる判定が降ってるのにしようか。死者になら迷惑かからないでしょ」

「副大臣!?」


明らかに、事件の容疑者をでっち上げようとしている。


「ななな、何してるんですか貴方は!?」

「君こそ、私たちがあそこに行ったのは何でだと思ってるんだ」

「それは、マティスが死んでることを確かめに……」 


はぁー、と心の底からの溜め息。


「マティスはおまけ。本命はこっち。ガウナ君は、事件が“解決”するまでって言ったんだろう? それなら、引き伸ばす材料を与えてやらなくちゃ」

「事件が迷宮入りしますよ!?」

「したらしたで、ガウナ君の負けだねぇ」


ニヤつくユリズ。ブランは半眼になる。


「ウソウソ。わかってるよ。あくまで三日だけだから。ほらこれで、私も罪を犯した」


そのニヤつきは、昔から温かいものだった。ブランの胸は締め付けられる。


自分が死体遺棄をしたばっかりに。


いざとなったら、私はーー。


ブランは覚悟を決め、ユリズと共に、資料を漁ったのであった。






と、いうことで、十二年前に死んだ犯罪者、ラフト・バリエスタが選ばれたわけである。


ジルトが複雑そうな顔をしながら言っていたことを思い出しながら、ファニタもまた、眉を顰めていた。


傍には『山女の契約』の新刊。その表紙を撫でながら、ファニタは呟く。


「死者の復活……公爵のあれが、『アッカディヤの魔術儀式』とするなら……」


四年前の少女は生きていると、ガウナが断定したのが、あの術だとしたなら。


「儀式は、血も何も関係ない。二百年も、何もかも……」


口に出すたびに、ファニタの目は見開かれた。

机の引き出しにしまってある、完成稿を取り出す。


「父さんの論文は、『アッカディヤの魔術儀式』が、もしも完成したらって話だった。死んだ場所、二百年後の魂、魂が転生するのに必要な捻り……ぜんぶぜんぶ、意味のないものだったんだ」


全部全部。


「別の魂に乗り換えれば、失われない」






アルドは、行儀悪くも机に足を乗せ、渡された新聞を見ていた。この朝刊は、とある人物が差し入れとして置いていったものである。


「あの魔女、性格悪いよなあ」


笑いながら言う。


ライケット・オリヴァー監察官の殺人事件の容疑者として浮かび上がった男、ラフト・バリエスタ。彼を視ても、何秒後かの未来は真っ黒。けれど……。


「まいったね、こりゃ」


半日後。


ラフト・バリエスタは、確かに視えた。


……写真とは、違った外見を伴って。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ