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だらだら不本意運命奇譚  作者: 縞々タオル
伯爵と復讐
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実在

公爵戦第2ラウンドとリーちゃんの疑問

衝撃的な言葉を投げるだけ投げて、公爵はジルトの反応を楽しそうに待っている。


まったく、人を驚かすのが好きな公爵である。


この前ここで話した推理は、セブンスが途中までしか教えてくれなかった話を、ジルトが都合の良いように補完したにすぎない。


これみよがしにセブンスの名前を出す為に、ガウナの陰謀論をでっちあげたからだ。ジルトとしては、師匠の威を借る弟子状態になろうが、釘が刺せればそれでよかった。


それともう一つ。遅かれ早かれ、宮仕していたセブンスの弟子だというのは、ジルトの姓を調べれば一発なので、早い段階でバラしたかった点もある。


問題は、そのバラすタイミング。師匠に嘘を教えられるままに的外れな推理をした間抜けな弟子と印象づけるために、ジルトはあのタイミングでセブンスの名前を出した。


セブンス・レイクの名前は、後ろ暗いことをやってきた人々にとっては死神の名に等しい。その名前は、ジルトの味方にも敵にもなる。だからこそ、あの場面で何気なく出さなければならなかったのだ。



目的と手段が逆だと、その師匠は言った。



ジルトは公爵を、薔薇の魔女を信奉している人物であるとは考えていない。


この前はリルウをお披露目なんて言ってみたが、お披露目せずとも裏で進めればいいだけなのだ。


溺愛ゆえにお披露目なんて愚かな行為である。だからといって、地下組織を炙り出すためというガウナの言説を信じるのも単純すぎる。


それでは、ガウナがリルウをあの場所ーー戴冠式に出した、真の目的は?


それさえわかれば、この、自分の左側に座る少女の立場も、少しはよくなるのかも……ジルトはそう思いながらリルウを見る。


「!?」


うっとりしていた。この上なくうっとりしていた。紅の瞳がきらっきら輝いていた。きゅう、とジルトの腕に抱きついて、すんすん匂いを嗅いでいる。


「はう……お兄様の匂い……調香師にあとで再現させなきゃ……」


妙な言葉はともかく、ジルトにとって、リルウは薔薇の魔女でもなんでもない。ただの女の子である。そのただの女の子を蔑ろにし、おそらく囮に使うのは、リルウが言っていたとしても許せることではない。


とはいえ。


ガウナの提案、悪いことではない。リルウを救うと決めたからには、敵を知ることは大事だ。


「わかりました、公爵。俺で力になれることがあるのなら」


ジルトは、差し出されたガウナの手を取った。






ジルトの腕に抱きつきながら、リルウはご満悦だった。


『魔女の信徒』か何か知らないが、グッジョブ。そんな気分だ。


それにしても、あの地下組織は面倒くさい。


ジルトが『魔女の信徒』について、ガウナに聞いているのを聞きながら、リルウは渋面をつくる。


だいたい、焼け落ちた王家の歴史書を読んでも出てこない架空の王様の、架空の物語に一体何の意味があるのだろうか。


いや、架空は架空だが、一応年代は特定できるか。なにせ、セレス姫だけは王家の歴史書に名を連ねているし。まあ、その姫は未婚にして夭折。もしかしたら、亡くなった姫へ捧げた御伽噺なのかも。


でも。それだったら、五代前の宝石とか、十三代前の聖剣とか、確かに存在すると言える宝物を追った方が遥かに現実的で容易いと、リルウは思う。


まったく迷惑な話だ。セレス姫の生まれ変わりならともかく、御伽噺の架空の悪役の生まれ変わり扱いされてしまうなんて。


……いくら魔女の生まれ変わりだと言われても、リルウにはまったく自覚がなかった。そんなあやふやな御伽噺よりも、自分の右側にいる、実人物の方が重要だ。


だから、リルウは不思議に思う。


どうして、目の前の腹黒公爵は、彼女の実在を信じ切っているのだろう、と。


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