表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
だらだら不本意運命奇譚  作者: 縞々タオル
伯爵と復讐
17/446

標的の親友

あの少年と会ってから、一週間が過ぎた。


それだからだろうか。ガウナは、しばらく見ていなかった彼女を見るようになった。


今日も、ガウナが王城の自室で仕事をしていると、一人の少女が目の前に現れた。

歳の頃は、リルウと同じ。桃色のドレスに身を包み、その相貌は、金の髪に隠れがちだが美しい。


彼女は何も言わずに、綺麗な草色の瞳でガウナを睨め付けていた。

その瞳を見るたびに、ガウナは安心するのである。


「そうだ、見ていてくれ」


恍惚。眉尻が垂れ下がり、目が細められる。ガウナはあの時のような極上の笑みを浮かべ、そして……、


「ガウナ様」


ノックの音。


部屋に入ってきたクライスは、執務机の前に立つ。少女はいつのまにか、消え失せていた。


「お忙しいところ、申し訳ありません。アゼラ伯爵が、面会にいらっしゃっています」




久しぶりに会った伯爵は、ずいぶん緊張しているようだった。


「このようなところまでいらっしゃるとは。どうされたのですか?」


言外に、なぜ王城に来たのかと問うた。彼にはある任務が言いつけられているはずだが、その任務の経過は手紙で知らされていた。


「至急、お耳に入れなければならないことがございまして……!」


細面に脂汗をびっしりと浮かべ、アゼラは声を震わせた。あまり、良い報告ではなさそうだ。


「ハルバ・ダグラスを引き抜くことに失敗しました……!!」


やはり、ことを性急に進ませすぎたのだろうか。


セブンス・レイク(性悪魔術師)の名前を出されて、こちらとしても焦ってしまったと、ガウナは心の中で嘆息する。


アゼラの知り合いに、件の学園の女生徒がいて、その女生徒の協力のもと、計画に必要なハルバ・ダグラスをこちら側に引き入れるつもりだった。


女生徒はアゼラの元同僚の娘らしく、父同様、お人好しであるという。今は母と妹を人質にとっているという話だったが……。


「ハルバに告白をさせ、街中に連れ出すという計画だったのですが……監視役の話しによれば、彼女にはよりにもよって好いている人間がいたらしく……ハルバにも筒抜けで、怪しまれたようです」

「恋心は隠せなかったわけだね」


お人好しであるが故に、アゼラの人質作戦に従わざるを得ない。しかし、お人好しであるが故に、気持ちを隠すのが下手。自分の恋心を隠せなかったわけだ。


「人を駒として見ているからそうなるんだ。君は彼女のお人好しを、自分の言うことを聞く都合の良さにしか捉えなかった。まったく彼女の内面を理解していなかった。彼女の父の時と一緒だね」


そう言うと、アゼラの顔が赤らんだ。これは怒りである。


「あの男は、我々の崇高な計画を理解できなかった。私と違って、才能があるにも拘らずです」 


ーー我々、ね。


「だから殺した?」

「いえ、あれは轢死ですよ」


爆発する寸前で、アゼラは踏みとどまった。


「あの男の娘は、利用するだけ利用して、生かしておいてやろうと思います」


贖罪なのか、なんなのか……この男もまた、複雑な男である。


それはともかく。 


彼女に好きな人物がいる。これは僥倖である。脅す材料が増えたといっても良いだろう。


「家族に、思い人か。人質はとればとるほどこちらのリスクが高くなっていくけれど、さて、どうしようかな」


できれば、その思い人とやらを、確保しておきたいところだが。


「思い人を引き込むことも、できるかもしれません」


アゼラが呟く。


「実は、彼女の思い人は、ハルバの親友です。今度は彼を脅して、親友を連れてこさせては?」

「なるほど、それは良い案かもしれないね」

「私は個人的な感情で、あの娘を冷静には見られません。が、その思い人でしたら、内面を理解した上で操ってみせます」

「うん。頑張ってくれ。ところで、その思い人の名は?」

「ジルト・バルフィンという学生で….…アウグスト卿?」


「…………いや、やはりその思い人とやら、私が請け負うよ。彼とは、一回腹を割って話し合ってみたかったんだ」

まあ、そーなるよね!

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ