ばればれ
学園内の食堂は、無駄に広く、ビュッフェ形式となっている。
昼休み。各々好きなものを皿に取って、三人は丸テーブルを囲んでいた。
ジルトはこほんと咳払いをし、二人を交互に見た。
ーーどうしてこうなった。
ファニタのお目目はぐるぐるしているし、突然呼ばれたハルバもわけわからんという顔をしている。
とりあえず、ファニタの言う通り取り次いでみたので、自分の用は終わったとばかりに席を離れようとすると、ファニタに制服の袖を掴まれ、ハルバに襟首を掴まれた。
「ジルト、説明しろ。これはなんなんだ」
「だから、言ったろ? そこの可愛いファニタちゃんが、お前に気があるんだとよ」
にやにやとジルトが笑うと、ハルバはなぜか怪訝な顔をした。
「いや、お前は知らないだろうけど、アドレナさんが好きなのは、〜〜!!」
言葉にならない悲鳴がハルバから漏れる。
「どした?」
「いや、なんでもない。ごめんなさい、言いません」
冷や汗をかくハルバ。代わりに、ぐるぐる目から脱して、なぜか朗らかな笑顔になったファニタがいた。
ジルトは首を傾げながらも、料理を食べる。相変わらず美味いが高い。やはり自炊が一番だ。自炊で節約して、週末王都に行き、美味いものを食べる。これがいい。
飯のことしか考えてなさそうな親友に、ハルバは正直ため息をつきたくなっていた。
「いやお前鈍感すぎない?」と問い詰めたくなろうものである。
ファニタに、足のつま先を、思いっきり踏まれた。
たしかに、本人の前で思い人をバラそうとするのは悪かった。
だが、周知の事実になっていることを、果たしてバラすと言えるのだろうか。
実際、二年一組のクラスは担任含めてファニタの甘酸っぱい思いを知っているみたいだし。なんならハルバのクラスメイトが「今日のアドレナ嬢」の話をしているくらいだし。
バレていないと思っているのは、本人だけなのではないだろうか。
傍目に見てる分には楽しいけど、いざ自分の身に降りかかってくると厄介なものである。というかなんで俺?
謎の理不尽に巻き込まれた気分で、ハルバはもそもそと料理を食べ始めた。
一方。ハルバに制裁を与えたファニタは、緊張のあまりぐるぐる目から、謎の笑みを浮かべるまでになっていた。
彼女が思うことはただひとつ。
ーーバレてた!!
どうして? なんで? これでは、計画が実行できない!
焦るファニタ。わたわたと手を動かす。
「べ、別にジルトのことなんて、何にも思ってないから! 私が好きなのはダグラス様なの!」
「自分で晒していくのか……」
ぼそりとハルバに呟かれる。
「べ、別に知ってるし……」
面と向かって好きじゃないと言われて、意外に傷ついた様子を見せるジルト。普段から光の見えない目がさらに澱んでいる。草色が底なし沼の色になっている。
「ち、違うのジルト! 違わないけど、今は好きじゃないの! 終わったら好きだから!」
焦りが焦りを生む悪循環で、要らないことまで口走る。
「あー、レタス美味いな、このブロッコリーも美味いなあ」
「意外とショック受けてるぞ! 良かったな!」
ジルトの意識がどこかに旅立ち、聞こえないのをいいことに、にこやかな笑みで親指を立ててくるハルバ。完全に先程の意趣返しである。
計画は失敗だ。ファニタは、あの男にどう言い訳をしようかと考えると同時に、心のどこかでは、ハルバに恋心がバレていることを、安堵していた。
ーーやっぱり、人を犠牲にするのはよくないものね。
隠しきれなかった自分の恋心も、たまには役立つものである。




