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だらだら不本意運命奇譚  作者: 縞々タオル
見放し見限り、見捨てられ
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末長くよろしく

自分史上甘々回です、やったー!

空が白んでいく。瓦礫の海で、セブンスは、何かを探していた。


『僕は約束をしたんだ。魔女になってあげるって』


か細い声が聞こえた。セブンスは、その声の方向へと足を進める。


『ねえ、聞こえてる? 母さん?』


声が聞こえなくなった。

死んだのか、そう思って、足を止めた時だった。


『どこまで話したっけ。そうだ、リルウちゃんと絵本を読んだんだよ。英雄アルバート物語っていう本。けっこう長めだったけど、二人で読んでたらあっという間だったんだ……』


幸せな会話は、ずっと続いていた。少年は、同じ話を何度も繰り返した。とても嬉しそうに。


それを終わらせるべく、セブンスは、少年の真上にある瓦礫をどけた。


「お前、誰と話してるんだ?」


決まっている。母さんとやらだ。その母さんは、たぶん炭になって死んでる。

そんな現実を突きつけてやろうとして……セブンスは、目を見張った。


少年は微笑んで、目を閉じた。そんなことわかってる、そう言いたいかのように。


規則正しい寝息が聞こえてくる。死んでないことに安堵した自分に、セブンスは苛々した。


ーーいい加減にしろよ。


俺は人を翻弄するタイプの人間なんだ。決して翻弄されたいわけじゃない。


馬鹿な親友を止めに来ただけなのに。焼け焦げた王宮を見て、一番最初にしたことは膝をつくことだった。こんなガキにすら驚くなんて。


『神様は、自分のことを考えられる人に微笑むのよ。だから、貴方はそういう人間になりなさい。他の人を踏んづけてでも、生きるの』


誰かの声が、心の中でこだまして、セブンスは少年を抱き上げた。


「馬鹿らしい」


朝日に照らされた、少年の目元は赤かった。



 



魔法は一代限りではなく、受け継がれていく。神と契約した者と、その子孫だけが魔法を使えるようになる。


ダグラスの子孫たちは、才能の差はあれど、使おうと思えば、皆魔法を使える。代々あの一族は、予知能力を使って、王を補佐し、その地位を守ってきた。


だが、彼らが待ちわびていたのは王ではなく英雄。そして、王が待ちわびていたのも、英雄なのである。


「俺の真似事かぁ。あの落伍者、なかなかしぶといな」


遠く離れた帝国を千里眼(リアルタイム)で見ながら、ペルセは興味深そうに呟いた。


本来、魔法はペルセと契約した者の子孫か、直接契約した変わり者だけが使える、“神からの特別な贈り物”である。

しかし、そんな贈り物を、ただの人でありながら、人に施すのがあの男だ。


ルクレール・ヘッジは、セブンス・レイクと契約することにより、ガウナの“抜け穴”も使いこなせるようになった。そして、今。


ラミュエル=レグナム・リオーネというひとりの少女を、魔法使いに仕立て上げようとしていた。




「……はっ」

「あ、起きた」

「ジルト!」


ハルバとファニタの声が聞こえた。ジルトは保健室のベッドで目を覚ました。


「あんの脳筋従者!」


腹を押さえ、わなわなと震える。いつもいつも的確に同じところを殴られている気がする。


「顎じゃないだけ良いんじゃね?」

「そろそろ内臓がイくわ」


なぜか笑っているハルバは、すっ、と紙を差し出してくる。


「なんだこれ?」


七つ傘通り南四丁目三番地。


紙には、そう書いてあった。ハルバがちらりとファニタを見る。ファニタがこくんと頷き、説明してくれる。


「これが、『魔女の信徒』本拠地の住所よ」

「え? は?」


頭が混乱した様子のジルトに、ファニタは淡々と説明してくれる。ジルトがリルウと会うことをハルバが予知していたこと、監視役のクライスを視て、『魔女の信徒』への道筋を明らかにしたこと。


「それなら言ってくれれば良かったのに」


そうしたら、鳩尾への攻撃ももっと心安らかに受け入れられたのに。


恨みがましく見るジルトに、ハルバは眉を下げて笑う。


「そんなことしたら、お前に干渉したことがバレちまうだろ?」

「誰に?」

「お前が元内務大臣の居場所を予知してもらった相手。どうやら予知っていうのは、術者がそいつに関わると、他の術者からは視れなくなるらしいからな」


なるほど、怪しまれないために、ジルトにあえて教えなかったのか。


「それと、お前をギャフンと言わせたかった」

「て、てめー」

「寧ろそれが八割だな!」


親指立てて言うハルバに、ジルトは少しだけ殺意を覚えた。が、まあ。


「……ぎゃふん」

「言った! 言ったぞファニタ! やった!」

「完全に馬鹿にされてるわよ」


はしゃぐハルバに、ファニタは苦笑いした後に、ジルトのことを見る。


「喜びなさいジルト。ハルバの悪戯心で、貴方の“理想の復讐”に一歩近づいたわよ」

「ああ、そうだな」


ジルトはファニタに右手を差し出した。


「?」


わからなそうに右手を差し出してくるファニタの手を握り、その青色の目を見つめる。


「ありがとうな、ファニタ。お前がいてくれてよかった。俺のエゴに付き合ってくれて、ありがとう」

「な、ななな……」

「なんか俺の時と誠意の差がありすぎね?」

「お前にはギャフンと言っただろ?」


態度の差こそあれ、ハルバとファニタ、二人ともに感謝している。どうしようもない道に引きずり込んでしまったことを後悔しながら、頼もしく思っている。


「だから、もう少しだけ、(俺のエゴに)付き合ってくれるか?」

「は、はい! よろしくお願いします!!」


なぜか敬語になったファニタは、湯気が出そうなほど顔を真っ赤にして、それから両手で握ってきた。


「末長く、よろしく!!」






正気になったファニタはベッドの中で悶えるのだが、それはまたあとの話。


「ああ、末長くよろしくな」


ジルトの珍しく柔らかな笑みを思い浮かべながら、「でも、言ってよかったかも?」と思うのも、またあとの話である。






そうして、魔法使いは動き出す。

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