表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
だらだら不本意運命奇譚  作者: 縞々タオル
公爵と薔薇の魔女
10/446

聞き間違いだな。聞き間違いだろう。


「……すみません、もう一度」

「いや、だから、君には同じ年頃の姉妹か、親戚の女の子がいるのかなって」

「聞き間違いじゃなかった!!」


ジルトは机に頭をぶつけたくなった。


そうだ、不穏な雰囲気ですっかり忘れていたが、こいつ、ロリコンの噂があったんだった!! リルウの時に冗談めかして言ってみたけど、噂はマジなのだろうか。


「いや、俺には姉妹も、親戚の女の子もいませんね、残念ながら」

「そうか……」


心底残念そうに言って、公爵はため息をついた。


「いたとしたら、私の妻にしようと思ったんだけど……」


ドン引きである。初対面の少年の身内と結婚しようとする狂気に、ジルトは帰りたくなった。そんなジルトの気持ちを察してか、公爵は顔の前で手を振った。


「おっと、これは挨拶みたいなものなんだ。ごめんね。改めまして、私はガウナ・アウグスト。一応公爵と宰相をしているよ」


そんな挨拶があるかと思ったが、ジルトも一応自己紹介をする。


「はじめまして、アウグスト公爵。俺はセント・アルバート学園に在籍している、ジルト・バルフィンといいます」

「リルウを助けてくれた子だね。その節はどうもありがとう」   


ガウナは微笑んで、頭を下げた。


ーーリルウ、と呼んでいるのか。


親しみがある。リーちゃんの恋路は明るいな。ジルトは真剣な顔をして、そんなことを考えていた。


「話がしたいと言ってくれて助かったよ。私としても、君には謝礼金を渡したかったからね。リルウのために色々と出してくれたらしい」

「いえ、それには及びません。不敬ながら、あの瞬間だけは、リルウ陛下と俺は兄妹でしたから」


くさい話だが。串焼きを食べるリルウの笑顔だけで、ジルトには十分だった。


公爵は、目を瞬いた。


「それなら何故、私と会おうと思ったのかな?」

「聞きたいことがあったからです。

貴方がなぜ、よりにもよって、英雄アルバートを持ち出し、リルウが魔女の生まれ変わりだと民衆を誘導しているのかを」




言いながら、ジルトの脳裏にはとある少女との会話が蘇っていた。


ーー四年前。


あの戴冠式から数日。普段は人の弱みを晒すゴシップ紙さえも、新たなる王と、その後見人の誕生を美辞麗句で盛り上げていた。


『はぁー、こりゃ、めんどくせえことになりそうだなあ』


モーニングコーヒーを飲みながら、ゴシップ紙を読んでいた赤髪の少女が呟いた言葉に、同じくコーヒーを飲んでいた幼き日のジルトは首を傾げる。


『どういうこと?』

『お前、英雄アルバートの話は知ってるか?』

『知ってる。薔薇の魔女の脅威から、王都を救った人だろ?』

『……そうだ。なんともめんどくさいことに、馬の骨公爵サマは、自分をアルバートに見立てて……まあそれはいい。問題なのは、あのむす、リルウ陛下をセレス姫に喩えたことだ』

『どうして? アルバートは、セレス姫と結婚して王になったんだろ? ちょっと歳が離れてるけど、美男美女カップルで良さげじゃない?』

『まあ、銀髪と金髪って映えるからなあ。じゃなくて。問題は、リルウ陛下の容姿なんだよ』

『かわいい』

『違うそうじゃない。そうか、可愛かったか。俺も見に行けば良かったなあ』


ジルトとしては、贔屓目なしに少女も見た目だけは可愛いと思うのだが。

そういうことを言うと、関節技を決められそうなので、そっと心にしまっておいた。


『陛下は金の髪に紅い瞳。セレス姫は青い髪に青い瞳だ。全く違う。寧ろ、当てはまるのは魔女の方の容姿。なんでこいつはリルウ陛下を巻き込んだんだ…? 唯一の王族を伴侶にする発言も同然じゃねえか。わざわざ敵を作る真似をして……いや』


ぶつぶつと呟く少女。ジルトはいつものことと、呑気にトーストを齧る。この少女かも怪しい人間は、探偵紛いのことが大好きなのだ。それでいて、人より多くのことを知る立場にあるので、真実により近い答えを導き出すことができる。


ジルトがトーストを齧り終わる頃に答えが出たらしい。少女は得心がいったというように、膝を叩いた。



「はーん、なるほどぉ。こいつ、目的と手段を逆にしたんだな?」


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ