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ショタパパ ミハエルくん  作者: 京衛武百十
第一幕
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交通当番

PTAとしての活動は、何も役員や委員だけじゃない。一応、<自主参加>という建前はあるけれど、通学路の中でも比較的危険と思われる交差点などでの<交通当番>については、原則、保護者は全員参加とされていた。


これも、昔は祖父母なども同居していたならそちらに協力を頼むことはできたかもしれないが、核家族化が進んだ現在では親がやることになる場合が多い。


仕事などがあると大変ではあるものの、<核家族で共働き>や<シングル家庭>というものも多い昨今では、


『仕事がある』


というのはどの家庭も同じということで、免除の理由にはならなかった。


ましてや、アオのように在宅仕事となれば時間の都合もつけやすいので、なおのことだ。


アオ自身も、その辺りは承知していた。


だから、二ヶ月に一回程度の割合で回ってくるそれについても、


『面倒臭いなあ…』


とは思いながらも当番の日には、信号のない交差点に、ベテランの交通指導員の女性と共に旗を持って立ち、通学する子供達を誘導する。


最近の子供はおとなしい子が多いらしくて、


「おはようございます」


とアオが声を掛けても返事をしてくれない子も少なくなかったものの、被害児童が通う学校のPTAの役員が誘拐犯だったという事件があったりもした昨今、同じ学校の生徒の保護者だからといって無条件に信用はできないというのも当然だと感じ、それについては気にしていなかった。


『すべての生徒が、品行方正、清廉潔白、明朗快活で元気よく笑顔で、『おはようございます!』と大きな声で挨拶してくれるなんていう学校とか、空想の中にしか存在しないよね。


むしろそんなのが存在したら、嘘くさくて気持ち悪いって感じてしまいそう……」


とも思ってしまった。


だからそれ自体は気にならない。


ただ、ある日、


「ごめんね~、ちょっと待っててね」


自動車が近付いてきたのでそちらを先に行かせようと、旗を掲げて集団登校の列の前に立った時、二年生か三年生くらいの男の子が、


「どけよ!」


と声を上げてアオの横をすり抜け、横断してしまった。


幸い、自動車のドライバーがそれに気付いて速度を落としてくれたので事なきを得たものの、タイミングが悪ければ事故になっていた事例だった。


アオは咄嗟には何もできなかったものの、ベテランの交通指導員の女性が、その男の子に、


「自動車が来てたでしょ? ちゃんと指示に従ってね」


と声を掛けると、その男の子は、


「オレがはねられたらお前らの責任だ!」


と吐き捨てて走り去ってしまう。


「……」


あまりのことに呆然とするアオに、女性は、


「たまにこういうこともあるから、気にしないで」


と言ってくれた。


『家で何かあったのかな……』


その男の子のことはこれまでにも何度か見かけたものの、今までは挨拶しても返事をしなかっただけだった。なのに今日はあの態度。


しかもいつも不機嫌そうな表情をしてたことで、なんとなく見覚えがあったのだった。



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