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ショタパパ ミハエルくん  作者: 京衛武百十
第一幕
81/697

他人の感性を否定するのは

アオは言う。


「最近、<感性>って言葉を使うのを嫌う人もいるけど、それを否定するのは、自分が何かを『面白い』とか『好き』とか感じること自体を否定する行為だと私は思う。


大学時代にさ、こんなことがあったんだ。


当事のサークルの先輩が、新刊が完売したお祝いに美味しい餃子を奢ってくれるってことになったんだ。みんな喜んでついていったんだけど、その先輩が、


『ここの餃子は絶品なんだ!』


って大絶賛してた餃子を食べたメンバーのうち、半数以上が、一口食べた途端に『あれ?』って感じで微妙な表情になった。


私も正直、『これ、美味しい…?』って思った。食べられないわけじゃないけど、『美味しい』とまでは思わなかったんだ。


だけど先輩はニッコニコで『どうだ! 美味いだろ?』ってさ。


さすがにその場では『美味しくないです』とは言えない雰囲気だったから誰も言わなかったけど、解散してから、


『あれ、美味しかった…?』


『いや、正直、微妙だと思った……』


『俺、あれだったら冷凍餃子の方がよっぽど美味いと思う』


って話になってさ。


だけど、その中で一人、


『え? 美味しかったじゃん。私、あれ、好きな味だよ』


って言うのもいてさ。


そしたら他のメンバーが、


『マジか~? 絶対不味いって!』


『味音痴じゃないの?』


みたいなことを言い出して、しまいには、


『先輩相手だからってゴマするのはやめたら?』


って感じですっごく険悪な空気になっちゃってさ……


私は、その時にはもう『人の好き好きは千差万別』って思ってたから、


『まあ、あれが好きな人もいるってことだね』


と割り切ったんだけど、な~んかその後、ギクシャクしちゃって、何人もサークルに顔出さなくなっちゃったこともあったんだよね~。


で、何が言いたいかっていうと、そのまんま、


『人の好き好きは千差万別』


ってことなんだよ。


自分の好きなものを他人も好きになってくれるとは限らない。


自分が美味しいと思うものを他人も美味しいと思ってくれるとは限らない。


自分が面白いと思うものを他人も面白いと思ってくれるとは限らない。


それは真理なんだよ。


そして逆もまた真なり。


自分が嫌いなものを他人も嫌うとは限らない。


自分が不味いと思うものを他人も不味いと思うとは限らない。


自分が面白くないと思うものを他人も面白くないと思うとは限らない。


これはまさしく<感性>の問題なんだ。他人の感性を否定するのは、そのまま翻って自分の感性も否定するのと同じこと。


他人の感性を認められない人は、他人からも自分の感性を認めてもらえないのを覚悟しなきゃならない。


私は、自分自身の感性を大事にしたいから他人の感性も否定しないようにしたいんだ。


これは、私の感情とは別の話」



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