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ショタパパ ミハエルくん  作者: 京衛武百十
第六幕
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演奏を浴びる

こうして、<ラーラ・カサンドラ>のリハーサルが始まった。曲順の再確認と、照明や音響の演出を担当する係との連携を取るためのリハーサルだ。


だけどディマは、本人が言ったように、すごく真剣な様子で、そして本気の演奏を始めた。


しかも、ドートとカミラも、凄いパワーと勢いで場を支配するディマのギター負けまいと、それこそ全身全霊をかけてドラムを叩き、ベースを弾いた。


僕達はそれを、舞台袖の奥の方から見る。観客席じゃないから当然、音響とかはまったく考えられてない場所だけど、スピーカーさえこっちに向いてないけど、それでも<ラーラ・カサンドラ>の音楽が大変なものだというのは伝わってきた。


特にイゴールは、まるで雷にでも打たれたみたいに硬直してしまって、唖然とした表情で彼女達の演奏を、それこそ全身で『浴びて』いたんだ。


そう、『聴いて』いたんじゃない。『浴びて』いたんだよ。


間違いなく<魅了>されていた。ディマは決して魅了(チャーム)を使っていたわけじゃないのに、イゴールにとっては完全にそれに等しい効果をもたらしていたみたいだね。


吸血鬼としての能力を使わなくてもそれと同等のことができたりもするんだ。


それが<人間という生き物>だ。


非力なはずなのに、素手じゃ犬にも勝てなかったりするのに、途轍もない研鑽を重ねることで、無理にも思えるようなことを実現してしまったりもする。


もちろんディマは元々吸血鬼だから、このくらいはできて不思議じゃない。だけど、ただの人間であるはずのドートとカミラも、ディマに負けまいとして練習に練習を重ねて努力を続けてきたんだろう。ディマに対して、


『一人で突っ走りすぎだ!』


とは言いつつも、実際の演奏を聞く限りじゃ、不思議とバラバラっていう印象はない。それどころか、ヒリヒリとした緊張感はありつつ一つの音としてまとまって、体を包み込んでくるんだ。


ディマが二人を引っ張りながらも、ただ一方的に導いているというんじゃなく、二人ならしっかりとついてきてくれるというのを信じているからこそのものだというのも感じられた。


そんな関係性が、音として伝わってくる。吸血鬼と人間。正体はきっと隠してるんだろうけど、隠しているからこそ年齢についてのやり取りがあったんだろうけど、人間だって自分のすべてを、本当の本当に何一つ隠すことなく明らかにしてるわけじゃないだろうから、隠し事の一つや二つあったところで、それで信頼関係が築けなくなるとは限らないはずだよ。



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