表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
ショタパパ ミハエルくん  作者: 京衛武百十
第六幕
660/697

自分は吸血鬼だ!!

『自分は吸血鬼だ!!』


と公言したところで、『そういうキャラ付け』だと思われるだけだろうという意味においては、なるほど賢いなと思った。


こういう業界で生きるというのは。少しくらい突拍子もない振る舞いをしても、それもやっぱり<キャラ付け>として受け流されるだけだろうしね。


そんなディマは、僕達を連れて楽屋へと入った。そこには、


「なんだディマ、隠し子か?」


「あんたまさか、誘拐……?」


いきなりそんなことを口にする女性二人が。


それに対してディマは、


「んなワケね~だろ! サンドラの客だよ。ここまで案内しただけだ!」


苦笑いを浮かべながら応える。


「何だつまらん」


「日和りやがったか」


そう言う二人だけど、実際にはホッとした様子なのが匂いで分かる。社会に対して不満のようなものは感じているものの、だからといって実際に攻撃に移ろうというほどじゃないんだろうな。


実際に攻撃に移ろうとする者はそれこそテロリストになったりするからね。


だから、パンクロッカーとしての活動で発散はできてるタイプなんだろうなとは思う。


だけどまだその辺を感じ取ることができないイゴールは、


「ははは……」


と少しひきつった笑顔を見せた。


それも無理ないことだ。これまで実際に見てきたのは本当のテロリストだったというのもあるし。


こういう形で発散できている人間というのは逆にほとんど見たことがないんだろう。だから戸惑っているんだと思う。


加えて、<吸血鬼としての感覚>が危険を伝えてこないということにも、少なくない違和感を覚えているんだろうな。


けれど、人間というのはとても複雑な生き物だ。もちろん人間以外の動物や吸血鬼でさえ、必ずしも画一的な反応を見せるわけではないのもありつつ、その中でも特に人間というのは奇妙な反応を見せることがある。


僕はそれ自体をとても愛おしいと思う。人間のそういう複雑さがアオを育んだはずだからね。


いずれはイゴールにもそういうことに気付ける時が来ればと願う。今回のこの出会いも到れるきっかけになってくれればと思ったりもするんだけど、どうなるかな。


そんなことを考えながら見守っていた僕の前で、


「まあとにかくサンドラの客なら歓迎するしかねえよな」


「だよな。私らの恩人だし」


言いながら笑顔を見せてくれた。それは、奇抜な格好とは裏腹に、むしろあどけなささえ感じさせるものだった。


見た目の印象に囚われていると気付けないものかもしれないけどね。


そういう部分も勉強になるかな。



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ