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ショタパパ ミハエルくん  作者: 京衛武百十
第六幕
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そういうキャラを演じてる

「よう、ディマ」


ドアを開けるとすぐに中から声を掛けられ、


「よう、イッグ。まだ生きてたのかよ」


なんて軽口を返す。彼女の視線の先には全身にタトゥーが施されたスキンヘッドの男性の姿。受付に座ってるからどうやらスタッフらしいね。そして、


「あ? なんだそのガ……」


イッグと呼ばれた男性はそこまで言いかけて、


「ああ、もしかしてオーナーの客か?」


慌てて言い直した。今日は来客があるというのを聞かされてたんだろう。だけどディマと一緒だったから彼女の連れだと思ったんだろうね。すると彼女も、


「みたいだね。まだ約束の時間には早いんだろうけど、たまたまそこで会ってさ。せっかくだから一緒に来たんだ」


事情を説明する。これに対してイッグは、


「そりゃご苦労なこった。でも悪ぃがオーナーはまだ来てねえぜ。待っててもらってもいいが、こんなとこ、小さな子供にゃつまんねえだろ。そっちの兄ちゃんはともかくとしてよ」


僕と安和(アンナ)とイゴールを見てそう口にした。だけどディマは、


「いいじゃんいいじゃん。私がそれまで相手してるからさ」


両手を腰に当て胸を張って笑顔で返す。これに対しても、


「おいおい、リハとかどうすんだよ?」


イッグが呆れたように言っても、


「あたしは天才だからそんなの要らねえんだよ」


ディマは平然と言ってのけた。


確かに、吸血鬼としての能力があれば、人間にはできないこともできるとは思う。それなりのリズム感を備えてる前提ではあっても、テクニックは身体能力で補えるしね。


例えば、すごい速度でギターを弾くのも、人間の場合は練習を重ねることで体に覚え込ませていかないと難しいとしても、吸血鬼の場合は、頭で考えながらでも十分な速度が出せるわけで。その上で、変則的な演奏さえできてしまう。


それを『狡い』と考える人間もいるかもしれないけど、吸血鬼という種そのものがそういうものだから。人間の知能に対して犬猫が、『狡い』と言ったところで、どうしようもないんじゃないかな。


とは言え、そういうのをあまりひけらかしていても軋轢を生むだろうから、ここはたぶん、<ジョークの類>としてディマは言ってるんだろうと思う。イッグは明らかに普通の人間だったし、彼女が吸血鬼であることを知らない様子だったし。


もっとも、


『あたしは吸血鬼だ!』


とか口にしたところで、ここじゃきっと、


『そういうキャラを演じてる』


と思われるだけだろうな。実際、<悪魔>を自称してるロックミュージシャンだっているそうだしさ。



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