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ショタパパ ミハエルくん  作者: 京衛武百十
第六幕
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人間の力じゃ勝てない相手を駆除することはできない

クラーラの話は、イゴールにとっては本当に有意義なものだったみたいだ。


「あんたと会えてよかった」


彼女が部屋を出ていく時、彼はしみじみとそう口にしたし。


「ありがとう。私もあなたに会えてよかった。つらい過去はなかったことにはならないけど、お互い、今の自分を認めてあげよう。それが生き延びた者の務めだと私は思う」


言いながらクラーラは改めて彼としっかり握手をした。


彼女と同じ形で吸血鬼になった者達も、それぞれ自分の人生を歩んでるそうだ。中には吸血鬼ハンターの犠牲になった者もいたらしいのもありつつ。


しかもその<吸血鬼ハンター>は、エンディミオンだった可能性もあるらしい。だからエンディミオンも罪を抱えて生きているということだね。


人間は、


『罪を犯した者は、命を奪った者は、生きてちゃいけない』


的な考え方をすることがあるけど、何度も言うようにそれはあくまで人間の考え方であって僕達吸血鬼を縛ることはできない。エンディミオンは確かに人間の感覚からすると罪を犯したけれど、人間の方で縛れない以上は、エンディミオン自身にそれを問うことはできないんだ。


そして、僕の眷属として吸血鬼になったイゴールのことも、人間は罪を問えない。彼はまだ命を奪っていなかったけれど、オレーナの死について彼自身が思っているような責任を問うこともできないんだよ。加えて、テロに加担していたことについても、人間だった頃にはかろうじて罪に問うことはできたとしても、今はそれも無理だ。


つまり、彼が感じている罪や責任は、彼の中にしかないものなんだよ。それをこれから徐々に和らげて行ってほしいと思う。彼自身が自分を赦してあげてほしい。


クラーラも、いわばテロに加担していた形になるけれど、それについては罪を問われていないし、問うこともできない。


野生の動物が人間をどれほど襲って命を奪っても、それを<罪>として問うことはできないのと同じだよ。危険を排除するために狩ろうとしても、吸血鬼は熊やワニのようには人間に狩られてくれないしね。


<駆除>は<罪を問う行為>じゃないし。


人間の力じゃ勝てない相手を駆除することはできないし。


これについてもイゴールには理解していってもらわないとね。


時間はまだ十分にある。焦る必要はないさ。でもその上で、イゴール自身がどういう選択を行うかは、彼の自由だ。エドマンドやメアリーのように人間と関わらない生き方をしてもいいし、逆にエイスネのように人間の社会を上手く利用して人間にまぎれて生きていってもいい。



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