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ショタパパ ミハエルくん  作者: 京衛武百十
第六幕
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技術を伝えるための指導

一方この頃、ヘレナはと言えば、彼女と同じように暗殺者に仕立てようとして用意された少女達に対して自身が持つ技術を伝えるための指導を行っていた。


少女達は、<孤児>だった。それも必ずしも<魔女狩り>に絡んで親を喪った子供ばかりではなかった。あくまで身寄りがなく他に頼れる相手もいないというだけでしかない。


そういう少女達を、自分達にとって都合よく利用するために集められただけでしかなかった。


ゆえに、本心では誰一人そのようなことなど望んではいなかった。生きるために仕方なく言いなりになるしかないという状況であった。


しかしその中でも、そんな風に割り切れない者は当然のごとくいる。


「立て……」


ヘレナが氷のように冷たい言葉でそう告げても、ただただ蹲ったまま涙を流している少女がいた。


その少女は、押し入ってきた強盗に両親も兄弟も殺され、たまたま隠れていたことで見付からず難を逃れることができただけだった。その時の恐怖が蘇り、すくんでしまったのだろう。


するとヘレナは、声を荒げたりして少女を立ち上がらせたりするでもなく、ただ黙って、何一つ躊躇することなく、手にした長い針状の武器を耳の穴に突き立てて頭の中をかき回し、即死させた。本当にそれだけだった。他には何もない。憐憫も執着も憤りさえもそこにはなかった。あるのはただただ冷酷さのみ。


「ひ……っ!」


自分達と同じ年頃と身の上とおぼしき少女が一瞬でただの死体に変わるのを目撃し、他の少女達は悲鳴を上げることさえままならず強張るしかできなかった。むしろそれが普通の反応だろう。こんな状況に突然放り込まれたのであれば。


「立て……」


「ひいっっ!」


ヘレナが再び命じると少女達は弾かれるようにして一斉に立ち上がった。しかし一人だけ、失禁までして立ち上がる事もできない少女がいた。


「……」


その少女に対してもヘレナは容赦なく針を突き立てる。


「っ!!」


自らを守ろうとして手を顔の前にかざしたものの、その手の平を貫いて固く閉ざされた瞼も突き破り、眼窩の奥から脳へと達し、哀れな被害者の命を消し去って見せた。ゆえに少女達には他に選択肢はなかった。生き延びるには言われたことに従うしかない。


もっとも、従ったところでその先に待っているのはやはり地獄であろう。彼女達を利用しようとしている者達にとっては、所詮は使い捨ての道具でしかないのだから。


ヘレナが生き延びているのはあくまで彼女の素養と強運によるものであろうから。



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