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ショタパパ ミハエルくん  作者: 京衛武百十
第六幕
641/697

ヘレナ

ヘレナは、幼い頃からどこか超然としたところのある子供だった。子供らしく甘えたり我儘を言ったり拗ねたりということがない、むしろ異様なほど聞き分けのいい子供だった。両親の言うことには一切逆らわず、言われた通りに淡々と振る舞うのだ。


母親が魔女だとして殺害された時にはまだ十歳にもなっていなかったのに、歩いて一時間以上離れた隣村の祖母の家にまで届け物をしに行っていて、しかもそのまま翌日まで祖母の家に泊まっていったので、事件に巻き込まれることがなかった。


いや、むしろその予感があったがゆえに両親は娘を避難させるためにそれを命じたと言った方がいいだろうか。


彼女の母親が殺害された後、ライリーももはやその村にはいられず、娘と自分の母親を迎えに隣村へと向かい、そして二人を連れてさらに遠く離れた知人を頼って逃げ延びたのである。


この時にも、ヘレナは、母親がいないことについて何かを察したかのように敢えて問い掛けるようなこともしなかった。


しかしその後も、ライリーとヘレナは、魔女の親族であるとして、追われるようにあちこちを転々として暮らすことに。ライリーの母親でありヘレナの祖母である女性は、そのストレスに耐えられなかったのかほどなくして亡くなってしまったが。


なのにヘレナは、やはり不満一つ漏らすことをしなかったのだ。


そんな逃避行が二年ほど続き、たまたま立ち寄った町で、ライリーは、ある男と出会った。その男は、ライリーと一緒に臨時の荷捌きの仕事をしていたが、娘連れで定まった家も持たず逃げるように暮らしていた彼を見て、


「あんた、もしかして家族が魔女狩りにやられたのか?」


と問い掛けてきた。


「!?」


まさかのそれにライリーは強張った様子を見せたものの、男は、


「心配すんな。俺も同じだよ。俺の場合は母親だけどな。母親が魔女の疑いを掛けられて殺されたんだ……つらかったよな」


と告げた。これに、


「う……うう……うあああ……!」


ここまで自身の感情を押し殺して耐えてきたライリーも抑えきれなくなり、声を上げて泣いた。そんな父親の姿についても、ヘレナはただ黙って見ているだけだったが。




こうしてその男の紹介で、やはり同じように家族を魔女狩りによって殺された者達の集まりに合流、ようやく腰を落ち着けることができる場所を得た。なにしろそこは、町の半分を事実上支配している商人が持っていたアパートメントであり、住人はすべてライリーやヘレナと同じ境遇の者達であったのだ。



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