あんたらのやり方は
「メアリー、彼は私の担当だ。そこまでにしてもらえないかな」
不意に声が耳に届いてきて、エドマンドはハッとなって顔を上げた。一方のメアリーは、
「……」
腕を組んで仁王立ちになったまま視線さえ向けない。
エドマンドが視線を向けた先には、荷馬車に乗ったエルビスがいた。また顔をマフラーで覆っている。その彼を、昇ってきた朝日が照らす。するとメアリーも、ベールの付いた鍔広の帽子を被った。ちょうどそこに、建物の陰から朝日が差し込んできた。それを避けるためにペールの付いた帽子を被ったわけだ。
「お前らは、いったい……?」
<ヴァンパイア>だと言われても、自身の傷が一瞬で治っても、メアリーの傷が一瞬で治るのを目の当たりにしても、やはり納得はできなかった。
無理もない。
「診療所に戻ってから詳しい事情を説明するつもりだったんだけどね」
エルビスは、ふてぶてしく構えるメアリーに話し掛けた。けれど彼女は、
「あんたらのやり方はまどろっこしくて見てらんないのよ」
たいそう不満げだった。そんな彼女に対してもエルビスは感情的になることなく、
「メアリーの境遇からするとそう感じるのも無理はないけれど、性急過ぎるのは失敗の素だよ」
諭すように告げる。
「ふん……!」
メアリーは不服そうに鼻を鳴らしながらも踵を返し、荷馬車に飛び乗った。まるで重力が失われたかのようにふわりと彼女の体が宙に浮かんで。
実際には足首のバネだけで自身の体を跳び上がらせたのだ。途轍もない身体能力だった。
そうして唖然となっているエドマンドに、エルビスが、
「馬車に乗ってもらえないだろうか? これから町の診療所に向かう」
声を掛けた。
「あ……ああ……」
あまりにもあまりにな状況に混乱したまま、エドマンドは馬車に乗った。すると自身の体の軽さにハッとなる。
「なんだ、これ……」
まともに食べられていた時でさえほとんどジャガイモ以外のものを口にできたなかったからか体調が万全だったことは記憶にある範囲ではないほどだったにも拘わらず、途方もなく調子がいいのが感じられる。
「これも、ヴァンパイアだからってか……?」
ついそう口にしたところで、荷台に横になっている者達に気付いて手を口で押えるが、その者達は眠っているか意識を失っているかのようだった。明らかに今の自分とは様子が違う。そこに、
「あなたは特に危険だったから、私のクラン、<眷属>になってもらった。承諾なく処置を行ったことについては謝罪する。だからこれから先、あなたのサポートは我々が責任をもって行う」
エルビスが口にしたのだった。




