ママと一緒に
カレーを食べ終えると、今度はお風呂だ。
「は~い、ママと一緒にお風呂入る人~♡」
アオが笑顔で手を上げると、
「は~い♡」
全員が手を上げて応える。ミハエルどころか、実年齢では十三歳になる悠里まで。
とは言え、ミハエルも外見では十歳くらい。悠里も三歳くらいなので、絵的にはそれほど変じゃないだろうが。
ちなみに現在の蒼井家の家は、3LDKの、いかにも庶民的な戸建て住宅である。築三十年の建売住宅をリフォームしたものだ。決して<邸宅>と呼べるほどのものではない。
しかしそれは、蒼井家の家族のライフスタイルを第一に考えて選択されたものだった。費用が抑えられたのは結果論でしかないし、それにリフォームにはそれなりの費用を掛けている。
その一つが、お風呂だった。
家族五人で一緒に入っても窮屈じゃないものをということで、バスルームだけでも四畳半ほどある。もっと大きくしようというアイデアもあったけれど、そこまで行くと逆に今度は寒々しくなるかもしれないということで、敢えてこのサイズに収めた。
リフォームする際に、業者に、
「あまり突飛な造りにすると売る時に不利になりますよ」
とは言われたものの、
「別に売ることは考えてないからいいです」
と言い切ってアオが考えた通りに作ってもらった。
そんなこのお風呂は、家族全員が大好きな場所のひとつでもあった。
「~♪」
子供達は鼻歌交じりで服を脱ぎ、お風呂へと入っていく。
続いてアオとミハエルも躊躇なく脱いで、入る。
ミハエルと悠里と安和は、子供の体型ながら非常に引き締まった、どこかネコ科の獣を連想させるしなやかなスタイルをしていた。
それに対しアオと椿は、いかにも柔らかそうな、丸みを感じさせる体つきだった。
このあたりも、それぞれにすごく似ている。
アオと椿以外は見た目どおりの年齢ではないし、椿も実年齢よりはしっかりした子供なので、小さな子がやりそうな、
『お風呂場ではしゃぐ』
というイベントは残念ながらない。それぞれ自分用の風呂椅子を出して、ミハエル、悠里、安和、椿、アオの並びで座り、早速、体を洗い始めた。
でも、ある程度洗ったところで、
「は~い、洗いっこしま~す♡」
アオの掛け声で移動して円になって座り、悠里がミハエルの、安和が悠里の、椿が安和の、アオが椿の、ミハエルがアオの背中を洗う。そして、
「は~い、こうた~い♡」
再びアオの掛け声で反対向きになり、アオがミハエルの、椿がアオの、安和が椿の、悠里が安和の、ミハエルが悠里の、悠里がアオの背中を洗った。
さらに、
「は~い、今度は頭で~す♡」
同じ要領で、皆で頭を洗いっこしたのだった。