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ショタパパ ミハエルくん  作者: 京衛武百十
第五幕
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みんな吸血鬼だな?

食事で満足感が得られると精神も安定する傾向があるのは、人間も吸血鬼も変わらない。イゴールも、血の味がするレアステーキで満たされたからか、かなり落ち着いていた。


「じゃあ、ロビーに出てみようか」


僕はそう言って安和(アンナ)とイゴールを伴ってロビーへと下りた。そこには、何組かの宿泊客の姿。


「分かる……みんな吸血鬼だな?」


イゴールが呟くように口にした。


「そうだね」


彼が口にした通り、その時、ロビーにいた客は全員、吸血鬼だった。と言っても、三組だけだったけど。


吸血鬼向けのホテルとかは、一応、人間も利用できるものも多い。ただ、敢えて設備を古いままにしていたり料金を割高に感じるように設定していたりして、普通は選ばれないようにしているし、中には互助組織の仲介がなければ利用できない施設もあったりする。さらには互助組織そのものが運営している施設もある。


運営費用の大半は、例えば他に人間相手のホテルも経営していてそちらで利益を出したりという風に別の形で調達されてたり、それこそ寄付で賄っていたりするんだ。


あくまで吸血鬼が人間社会で活動しやすいようにというのが目的だからね。これ自体で大きな利益を出す必要もないし望まれていない。利益を出したいならパイが大きい人間相手の施設を運営すればいいだけから。


それに、株取引という手法を人間が編み出してくれたのは実にありがたかった。表立って動かなくても大きな利益を出すことができるようになったし。


その一方で、吸血鬼の多くは、<資産>というものにはそれほど興味を持っていないから、必要以上稼げてしまうとパーっと使ってしまって人間社会に還元したりもするね。


こういうホテルでも、例えばホテル内で使われる物品の類は、人間の業者から仕入れたりもしている。それについては、吸血鬼の存在を知っていたり、まったく知らない業者だったりと、様々だって。


ロビーで食後のお茶を注文すると、さっきはカウンターに立っていたアンドリーイが届けてくれた。今日の勤務を終えた後で、ついでに持ってきてくれたんだ。


イゴールと話がしたくて。


「ここ、いいかな」


「どうぞ」


僕達が着いていたテーブルに、アンドリーイも着く。そうして、


「改めてよろしく、イゴール」


握手を求める。


「あ……ああ、よろしく」


イゴールも戸惑いながらも応じて。それで、


「あ、あなたも元人間だったそうですね……?」


畏まった態度で話し掛けるけど、それがとてもぎこちない。慣れていないのがよく分かる。


「あはは。そんなに気を遣わなくていいよ。僕は元々ストリートチルドレンだったからね」


アンドリーイは笑顔で応えたのだった。



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