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ショタパパ ミハエルくん  作者: 京衛武百十
第五幕
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彼がそれで納得できるなら

『俺がバカだったばっかりにオレーナは死んだんだ……バカは罰せられて当然だよな……』


自分が吸血鬼になってしまったことを<罰>だと考えることで、腑に落ちてしまったんだろうな。


彼がそれで納得できるなら、そういうことにしておいていいよ。


ただ同時に、『バカは罰せられて当然』というのはちょっと違うかな。愚かな行いをする者を指して<バカ>と称しているなら、罰を受けなきゃいけない者は多すぎる。僕自身だって、ダンピールとして生まれる可能性があるのを分かっていて悠里(ユーリ)安和(アンナ)をこの世に送り出した。これだって十分に<愚かな行い>だと思う。


だけど、僕の願いを受けて悠里や安和を生んでくれたアオが<罰>を受けるというのなら、それについては異を唱えさせてもらうし、罰なんか与えさせない。


だからイゴールが、単に愚かだからという理由で罰を受けるというのは違うよ。違うけれど、今はまだ彼に対して『そうじゃない』と諭しても届かないのも分かる。なぜなら彼は、自身に罰が与えられるということで精神のバランスを保とうとしているんだから。


これも、自罰的な思考に陥ってる者がよくするものだよね。


罰を受けてこそ自身の気持ちに区切りを付けられるということなんだろう。残念ながら吸血鬼になってしまった彼に人間の法律は適用されないからそちらで裁くことも罰することもできないし、吸血鬼になって生き続けることを罰だと解釈するならそれでいい。


そうやって自身の行いと向き合い、いつか折り合いをつけることを学んでいってもらえればね。


だけどね、イゴールがどれほど自責の念に駆られてもオレーナは帰ってこないんだ。起こってしまった事象はなかったことにはならない。だからこそイゴールはこれから後、考えなきゃいけない。どうすれば同じ後悔をする者を減らすことができるかというのをね。


それこそが、罪を背負って生き延びた者の果たすべきことなんじゃないかな。


というのも、実は詭弁の類でしかない。人間だけなんだ。そういうことに意味を持たせようとするのは。生きているというのは、ただただ『生きている』という事実以上の意味なんて本当はないんだよ。テロリスト達の行いにさえ、意味なんかない。そこに無理に意味を持たせようとするから無茶をせずにいられなくなる。


大国が小国を従えようとするのさえ、実際には大した意味もない。どこまでも自己満足の類だ。どんなに<利>を説こうともね。その利を説いて強引なことをしたからこそ今の状況があるんだよ。



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