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ショタパパ ミハエルくん  作者: 京衛武百十
第五幕
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吸血鬼となった現在の自分自身の感覚

「くそっ……くそっ……くそっ……!」


シャワーを浴びている間も、イゴールはそうやって自身の中に湧き上がってくる感情を口にしていた。自分でもそれをどうしていいのか分からないんだろうな。人間だった時の記憶を基にして湧き上がってくる感情なのに、吸血鬼となった現在の自分自身の感覚と完全には結びついてこなくて、もどかしいというのもあるんだと思う。そうじゃなければ今すぐここを飛び出して、オレーナを死なせたテロリスト達に報復しに行くだろうからね。


結局、二十分ほどそうして懊悩した上で彼はバスローブをまとって出てきた。


「じゃ、次は僕が入るね」


告げて、入れ替わりに僕がバスルームに入る。安和(アンナ)と二人きりにするのは危険だと感じるかもしれないけど、眷属として吸血鬼になったばかりの彼じゃ、安和には到底及ばない。吸血鬼としての能力を上手く使えるようになるためには経験が必要なんだ。それこそ、赤ん坊が徐々に自分の体の使い方を理解していくみたいにね。


だから現状のイゴールは、生身では、


『世界最強と称される人間を膂力で圧倒できる程度』


なんだ。それだけでも人間には十分に脅威だとしても、残念ながら安和の足元にも及ばない。赤ん坊が健康な五歳児に力では勝てないみたいな感じかな。


その上で、念のため部屋の気配には意識を向けておく。すると、


「ちょっとは落ち着いた?」


安和が彼に話し掛けるのが聞こえてくる。


「……」


それに対しては応えなかったイゴールだけど、安和には彼から発せられている感情の匂いが分かるから、いくらかマシになっているのは察せられる。だからこそ、


「私は、テロリストなんて助ける必要なんてなかったと思ってる」


敢えて正直な気持ちを口にした。イゴールを眷属化したことについて完全には納得できていないんだ。でも、安和ならそう思うだろうなというのは僕にも分かっていた。分かっていた上で彼を眷属にしたんだ。


『せっかくの機会だから』


というのもあったからね。安和にもそれは伝わってる。伝わってるから、


「だけど、パパの眷属になったあんたをどうにかしようとか思ってない。私がそんなことをしたってパパは喜ばないしね」


そう言ってくれる。するとイゴールは、


「……なんだよ。俺のことなんてどうにでもできるっていう口ぶりだな……何様だってんだよ……?」


さすがに気に障ったらしいけど、それに対しても安和は、


「なに? 私に勝てるとでも思ってんの? それくらい、今のあんたでも分かると思うんだけど?」


告げた。ゆらり、と安和の中に力が立ち上がるのが分かる。


「……!」


瞬間、イゴールがギョッとなる気配が伝わってきたのだった。



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