表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
ショタパパ ミハエルくん  作者: 京衛武百十
第五幕
577/697

むしろ人間社会に紛れ込みやすくなった

ホテルに戻る道すがらにも、彼は問い掛けてくる。


「吸血鬼って人間の血を吸うんだろ? 血が吸いたくなったら、どうすればいいんだ?」


当然の疑問だった。だからそれについては、


「大丈夫だよ。人間が思ってるほど吸血衝動は強くない。必要なら、吸血鬼の互助組合に申請すれば、吸血衝動を抑えるための血液製剤が送られてくる。血液製剤には、最低限必要な成分だけを固形化した錠剤や、それでは満足できない者のために<全血パック>も用意されてるんだ」


と、これまた淡々と説明する。


「そうなのか!?」


イゴールはさすがに驚いた様子だった。無理もない。僕はさらに説明する。


「多くの人間にとって吸血鬼はファンタジーの中に存在する<怪物>であって、それこそ伝承にあるままの姿や振る舞いをしていると思っているだろうね。だけど実際には、その時々の人間社会の在り方に合わせて自分達をそこに適応させるための仕組みを作ってきた。特に、第二次世界大戦後には、急速に発達した人間社会を支えるシステムが僕達にとっても逆に都合がよくてね。献血などが普及したのも助かってる。血液製剤としてはもう使えなくなって廃棄することになった<期限切れのもの>についても、吸血鬼が飲む分には大きな問題はないから、こちらに回してもらってるんだ」


「そんなことができるのか?」


「うん。なにしろ、人間達だって一部の有力な国の政府関係者はこのことを知ってるし。知ってて敢えて吸血鬼と表立って事を構えないために黙認してたりする」


「マジかよ……」


きっと、眷属になる以前だったらまったく信じなかったであろうそんな話も、今の自分がもうその吸血鬼になってしまっている実感があることと、僕が嘘を吐いていないことも吸血鬼としての超感覚で無意識のうちに察してしまっているんだろうね。


イゴールに説明したとおり、科学技術が発達しオカルトが次々否定されてきたことで僕達吸血鬼の存在も信じなかったり恐れなかったりする人間が増えた結果、むしろ人間社会に紛れ込みやすくなった。信じてはいなくてもさまざまな伝承に語り継がれている吸血鬼のイメージは強くて、それにそぐわない振る舞いをしているとそれこそ疑わないんだ。


かつてはそれこそ噂一つでただの人間が吸血鬼扱いされたり魔女扱いされたりということもあったから、それに比べれば過ごしやすくもなったんだよ。そしてネットワークが整備されて対面でのやり取りが減るにつれ、一層、動きやすくなったよね。


加えて、データだけで判断する人間も増えたから、データさえ問題なかったらそれ以上の確認もされなくなったりね。



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ