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ショタパパ ミハエルくん  作者: 京衛武百十
第五幕
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勘違いされても困るし

こうして日が傾き始めた頃、眷属として吸血鬼の一員となったイゴールを伴って僕達はバスに乗った。


「くそ…っ! なんか体が痛え……」


声を漏らすイゴールに、


「まだ吸血鬼になりたてで、太陽の光に慣れてないからだよ」


告げると、


「え? 大丈夫なのか?」


と聞き返してきたから、


「うん。痛みはあってもすぐに死んだりはしないよ。それに太陽の光が当たらないようにすれば問題ない。すぐに完全に日も暮れるし、少しの我慢だ。夜になれば回復する」


そう応える。


「そういうもんなのか……?」


納得できないのも無理はない。こればっかりは自分で経験して感覚を掴んでもらうしかない。


こうしてバスに乗り、ほとんど乗客もいないそこで、声を潜めつつ彼に説明する。


「人間の世界に伝わってる吸血鬼の伝承は、そのほとんどが、事実を拡大解釈したり、実は因果関係がない事象を結びつけてしまってたり、たまたま上手くいったものをさも一般的な話であるかのように捻じ曲げて伝えてきたものだ。十字架やニンニクや聖水は効かない。太陽の光もそれだけじゃ滅多に死に至ることもない。白木の杭や銀の弾丸も、それまでに蓄積されたダメージの上にとどめとして使われただけのものだから、単体では致命的なダメージを与えられない」


「へえ……そうなんだ……」


彼も興味深そうに聞いてくる。


「じゃあ、本当はそれこそ無敵ってことか?」


とも訊いてくるけど、それに対しては、


「人間の感覚からすれば無敵に近いかもしれないけど、決して不滅でも不死でもないよ。『滅びにくく寿命も長い』というだけ。だから滅ぶこともあるし、寿命を迎えれば普通に死ぬ。それだけだ」


事実を簡潔に伝えた。この辺りもきちんと知っておいてもらわないといけない。勘違いされても困るし。だからこそ、


「吸血鬼は決して<完全な存在>じゃない。人間よりは少し力が強くて丈夫だというだけ。長生きだから知識もたくさん身に付けられるだけ。そしてこの世界にはしっかりと<バンパイア・ハンター>もいる。調子に乗ってるとすぐにバンパイア・ハンターに見付かって殺されたりもする。慢心は禁物だよ」


重要なことを確実に言葉で伝える。これを怠って彼が愚かな真似をすれば、それは彼を眷属にした僕の責任だ。人間の法は吸血鬼には及ばなくても、同じ吸血鬼に損害を与えるような問題を起こせばいろいろ不都合も生じてくる。『協力が得られなくなることもある』というのは最も大きなリスクだ。


僕としてもそんなのは望んでない。



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