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ショタパパ ミハエルくん  作者: 京衛武百十
第五幕
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これからどうすればいい……?

オレーナの死を目の当たりにして人間としての心が壊れたイゴールも、眷属になった途端に<吸血鬼の精神性>を手に入れたことで、唯一の家族の死を悲しみながらもそれ自体を冷静に受け止められていた。


そんな様子は、傍目には冷淡にも思えるかもしれないけど、吸血鬼としての力を感情のままに振るえば大変なのことになるのは分かり切っているから、むしろこれが当然なんだよ。


だけど、『変わってしまう』ことは紛れもない事実。これこそが、アオが眷属になることを望まない理由。今の自分の気持ちを失うのが嫌なんだ。


たとえ僕よりずっと先に命を終えるとしても。


けれど同時に、人間の気持ちというのは時間とともに変化していくものでもある。今はそう思っていても、実際に自分が年老いて命の期限が迫ったりしたら、眷属になることを望むかもしれない。


ただ、年老いてから眷属になっても、多少は若返り効果もないわけじゃないにしても本当に年齢そのものが巻き戻るわけじゃないから、老いた状態のまま長く生きることになるけどね。それが望ましいことかどうかは、当人次第だ。


その点、イゴールは十代半ばの肉体で吸血鬼になったわけだから、そういう意味じゃ条件は最高に近いかも。


でもそれさえ、彼自身の捉え方次第。


「俺、これからどうすればいい……?」


眷属となって吸血鬼化したことで人間としての生き方はできないことを本人も悟って、そう尋ねてくる。


これに対して僕は、


「そうだね。しばらくは僕達と一緒に行動してもらうことになると思う。吸血鬼としていろいろ学んでもらわないといけないから」


淡々と応えると、彼も、


「分かった。よろしく頼む」


本当に別人そのものの態度で口にする。


そして、人間が眷属になる瞬間を目の当たりにした安和(アンナ)は、


「こういうことなんだ……」


興味深そうに見ていた。


いずれ彼女も眷属を作ることになるかもしれない。その時のためにも、これからのイゴールの姿は参考になるだろうな。


もちろん、悠里(ユーリ)にとっても。


「じゃあ、日が傾いたら僕達のホテルに帰ろう。吸血鬼が経営してるホテルだから、君のことを紹介しておけるし」


「え? 吸血鬼がやってるホテルとかあんのか!?」


彼はさすがに驚いた様子だった。


「もちろん。ホテルだけじゃなく、それこそありとあらゆる業種に吸血鬼は入り込んでるよ。そうじゃないと人間の社会では暮らしにくいからね。そして、君と同じく人間から眷属になった吸血鬼もそこで働いてたりする。それも君にとっては参考になると思う」



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