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ショタパパ ミハエルくん  作者: 京衛武百十
第五幕
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敵の敵は味方

そしてテロリスト達は、国際社会から支援を受けることもできると考えているみたいだ。実際、その大国とイデオロギー的に対立している国々の中には、表立って支援をしているわけではないにしても、事実上の支援を行っているところも少なくないという現実もある。


『敵の敵は味方』


ということなんだろうけど、普段はテロ行為を批判しておきながら、


『自分達の敵を攻撃してくれるのであればたとえテロ行為でも支援する』


なんてダブルスタンダードを平然と行なっているような国が掲げる<正義>というのは、本当に空虚なものとしか僕には感じられない。


そうだ。人間が口にする<正義>なんてただの<立場の違い>でしかない。人間のやっていることを見ていればこそ、それが思い知らされる。


『正義の御旗を掲げる』


なんていう行為は、子供番組の中だけで十分だ。


現実の世界に正義なんていうものは存在しない。それが分かっているからこそ、僕達吸血鬼は、正義を掲げることをしない。


正義を掲げて人間達の諍いに介入することはしないんだ。


そのことを悠里(ユーリ)安和(アンナ)にもしっかりと分かっていってもらわないといけない。


翌日はセルゲイと悠里が昆虫を調べるために出掛ける。安和はそれに対しては今もまったく興味を持っていないから、僕と安和は、二人の目的地の途中にある街で買い物をすることに。


そこでは地元の僅かな産業の一つである、宝石を使ったアクセサリーが土産物として売られていた。その地域の伝統的な木彫りの人形の目とかに宝石が使われているんだけれど、正直、大きさも品質も飛び抜けて価値のあるものじゃなかった。


国を支える基幹産業としての展望はまったく見えない。


そういうものだった。


「お土産品として考えたら、充分に可愛いんだけどね」


安和は苦笑いを浮かべながらそう口にする。


「確かにね。職人がきちんと丹精込めて作ったものについてはいい表情をしてる。文化的な価値は十分にあると思う。だけどそれが国を支えるたくさんのお金につながるかといえば、そこまでのものじゃないというのが正直な印象だね」


僕もこれまで多くの国と文化に触れてきて、その経験から感じたものだった。


文化遺産のような形で国際社会にアピールし、それが認められればまだいくらか望みはあるんだとしても、この国を実効支配している大国も、大国の支配を打破して独立を目指しているテロリスト達も、その辺りについてはまったく頭にないようだ。


結局、自分達が描いている絵図だけしか頭になくてそれ以外の可能性について考えるつもりもないんだろう。



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