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ショタパパ ミハエルくん  作者: 京衛武百十
第五幕
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信頼される社会

あの父親を『正しい』と考える人間は、いったい、具体的にどの部分をもって正しいと考えているんだろう?


往来の真ん中で大声を出して他者を罵倒して、暴力を振るう、その振る舞いのどこを『正しい』と思ってるの?


『娘にとっては親であり目上の人間だから敬うべき』


だから正しいの? その<親>であり<目上の人間>の振る舞いが好ましいものであるかどうかは関係なく、ただただ<親>であり<目上の人間>だから正しいと言っているの?


おかしいな。あの場所で最も<目上>だったのは、セルゲイのはずなんだけどな。それこそあの父親やあの男の祖父母よりもセルゲイは年上であり、<目上>だったのに、どうしてそれを敬おうとしなかったんだろうね?


『そんなこと分かるはずがない!』


と言うかもしれないけど、見た目の印象だけで<目上>か<目下>かが決まるということなの? セルゲイの友人である人間には、


<一見すると四十代にしか見えない六十代>


だって珍しくもないんだけどな。それこそ、セルゲイと外見上の印象は大きく違わない六十代だって実際にいるんだ。あの父親や男よりも確実に年上であり目上である人間だっている。


それを確かめもしないで、見た目の印象だけで目下だと判断して横柄な態度を取るのが、本当に大人として正しい振る舞いだと考えているの?


そんなのが、


<目上の人間を敬う振る舞い>


だと本当に思うの?


本当に、


『<その場の自分の感情だけが優先されるべきだという甘え>じゃない』


と胸を張って言えるの?


相手が自分よりも目上であるかどうかがその時点で分からないのなら、せめて丁寧な接し方を心掛けるのが<大人>というものじゃないの?


だからあれは、


『目上を敬う』


なんていう振る舞いでさえなかったはずなんだけどな。


あの後、娘がどうしたのかは、分からない。両親に反発しそれこそ家に帰らないようにして自分が望む人生を送ったのか、それとも結果として両親の言いなりになって結婚し子供を作り、そして自分の子供に対して両親がしたのと同じ振る舞いをしたのかも、確認は取れていない。


だけどああいう振る舞いを『正しい』と考える限り、


<信頼される社会>


というものが実現されるとは、僕には到底思えない。


そんなものはただ、


<あれを正しいと考える者にとってだけ都合のいい社会>


だよ。そしてそれは、


<あれを正しいと考える者だけを甘やかす社会>


だ。


そうだね。特定の人間だけを甘やかす社会が長く繫栄したことはなかったんじゃないかな。



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