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ショタパパ ミハエルくん  作者: 京衛武百十
第五幕
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あなたが選んだことです

「……」


マデューに関わってしまったことを後悔し始めていた僕だったけど、助けを求めるように視線を向けた僕に対して、母は、


「あなたが選んだことです。最後まで見届けなさい。私も一緒に見届けてあげますから」


と、毅然とした態度で口にした。いつもと変わらずに穏やかなはずなのに、僕を真っ直ぐに見つめる瞳には、有無を言わさぬ力が込められてるような気もして、僕は歯向かうこともできなかった。


ううん。本当は僕が泣き言を口にすれば母は冷たく突き放したりはしなかったと思う。未熟な僕が愚かな選択を行ってしまうことがあるのなんて、分かり切っていたことだから。それが分かった上で母は、僕に自覚を促そうとしたんだろうな。


『他者の生き様に関わるというのがどれほどのものであるのかを理解する』


ことを。


未熟で愚かなこの時の僕にも、それは察せられてしまった。だからこそ僕は、マデュー達の行く末を見守ることにしたんだ。目先の感情に囚われて迂闊な真似をした僕自身の選択の結末を。




マデュー達の暮らしは、とても苦しいものだった。彼女が一緒に暮らしている子供達の名は、亡くなった一番小さい子が<リョーカ>。三歳くらいの子が<トゥーヤ>。五歳くらいの子が<フーリ>。六歳くらいの子が<アダ>。全員、血の繋がりがないのは、顔立ちと匂いで分かる。ただただ大人達に見捨てられた子供達同士で寄り集まって生き延びようとしてるだけの関係。


それでもマデューは、遺体からお金になりそうなものを奪って、四人を、ううん、ホントは六人いた子供達を養っていた。リューカの前にもすでに二人、亡くなっているのが、リョーカを埋めた場所の隣に二つ、小さな土の盛り上がりがあってそこから漂ってくる匂いで察せられた。


この世界で人間の子供だけの力で生きていくことの難しさがそこからも分かる。


マデューだけでなく、幼いトゥーヤ、フーリ、アダもそれぞれ、小さな畑を耕して少しばかりの野菜を育てているようだったけど、そんな家庭菜園みたいなもので十分な食料が賄えるはずもない。それでも、他の畑も荒れ放題で満足な作物が採れていないのを見ると、頑張っている方なんだと思う。


まともに働ける大人は、男性は兵士に取られ、女性はたぶん、別のところに働きに行ってるんだろう。それでいて完全に村を空けてしまうと国に接収されてしまうと考えて、老人達だけでも残らなきゃいけなかったんだろうな。


マデュー達以外の子供は、たぶん、母親の仕事について行っている。


連れて行ってくれる親がいないのが、マデュー達なんだ。



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