表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
ショタパパ ミハエルくん  作者: 京衛武百十
第五幕
503/697

見張り

そうして約十分が経過し、州軍の車両が近付いているのが僕の耳に捉えられた。


すると、管理室に置かれていた携帯電話に着信が。


「……」


僕が通話ボタンを押すと、


「州軍だ! 州軍の奴らがこっちに向かってる!」


と、スピーカーから聞こえてきた。なるほど。見張りも立てていたのか。当然の対応だね。けれど、


「おい! どうした!? 返事をしろ……!」


そう言った瞬間に、通話が切れた。異変を察したんだろうな。


危険を察知したらすぐに逃げる。結局それが生き延びる一番の方法だと思う。


人間はすぐプライドとかメンツとかそういった言葉を持ち出してくるけど、そんなものに拘るのは人間ぐらいのものだ。吸血鬼の中にもそういうものに拘る者がいないわけじゃなかったとはいえ、もうすでにそれは過去の価値観になってるんだよね。それが基で大きなトラブルになったことは一度や二度じゃないから。


だから実利を取るならプライドなんて、二の次、三の次になるんだよ。


人間の中には、


『命よりもプライドの方が大事だ』


『誇りを失うくらいなら死んだ方がマシだ』


みたいなことを口にする者も少なくないけれど、そういうことを口にする者ほど、実際の死に直目した時には恥も外聞も無く命乞いしたりするのが多かったな。


過酷な戦場を乗り越えてきた軍人でさえ、そうだった。普段は大きな口を叩いている職業的犯罪者にもね。


もっとも、職業的犯罪者の方は、過酷な現実の中で地道な努力をするのが嫌だから犯罪に手を染めるという者も少なくないし、本質的には精神が弱い者が多いのはむしろ当然なんだけどさ。


その中でも、『異変を感じたら危険を感じたらすぐに逃げる』という選択を行える者は、しぶとく生き延びることも多いんだろうな。


それが次の犯罪に繋がるのかそれともそこで足を洗うのかは、またそれぞれの選択だと思う。僕としては是非ともそこで足を洗ってもらいたいものだけど。


いつだってうまく逃げられるとは限らない。命を惜しむなら敵を作らない生き方をすることこそが最良だと思うよ。


犯罪組織のボスと言われるレベルの者達の中には確かに生き延びる者もいるんだとしても、それは実際は、自分の手駒を囮にしたり、トカゲの尻尾のように切り捨てたりすることで自分に手が届かないようにしているだけだったりするから。


そう、自分が手駒を使えるような立場にならない限り、使い捨てられたりするのが関の山なんだ。


冷静に考えればそれが分かると思うんだけど、不思議と『自分だけは上手くいく』と考えがちなのも人間という生き物の特徴かな。



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ