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ショタパパ ミハエルくん  作者: 京衛武百十
第五幕
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それが生まれてくる背景を正さない限り

こういう人間達をいくら打ちのめしても、それが生まれてくる背景を正さない限り終わりはない。<見せしめ>というのは、元々、犯罪傾向の低い人間にしか通用しないんだよ。日常的にこういうことをしている人間については、


『自分ならもっと上手くやれる』


と考えるだけなんだ。だから大した抑止力にもならない。そして、僕達が打ち倒して空きができたら、その縄張りに別の人身売買組織が入り込むだろうな。


それも分かった上で、敢えて僕達は対処する。人間という生き物をできる限り正確に把握するために。


セルゲイの通報で、州軍も動いてると思う。この辺りは、人身売買組織に対しては警察と同時に州軍も動くことになっているんだ。


悠里(ユーリ)安和(アンナ)、決して殺さないように無力化するんだ。軍との戦闘になればきっと死者も出る。しかも今はどうやら他にも宿泊客がいるみたいだ。巻き添えで犠牲者が出てもいけない。極力静かに、確実にね」


人間達には聞こえない速度と大きさの声で告げると、悠里は、


「分かってる」


と応じてくれたものの、安和は、


「殺すか眷属にしちゃえば楽なのにな……」


少し不満顔だった。彼女は理不尽な彼らへの憤りが強いんだね。けれど、


『理由があれば殺していい』


という感覚が危険であることは分かってる。加えて、人間を裁くのは人間に任せるべきだ。吸血鬼やダンピールである僕達の役目じゃない。人間自身が自らを律していけるようにならなくちゃ駄目なんだ。<人間じゃないもの>に頼っていては、人間はいつまでも自立できない。これは、<神という概念>についても同じ。


僕達吸血鬼は、<神>をあてにしない。一部の吸血鬼は人間と同じように神を信仰していたりもするけど、それは決して、<神という親>に甘えてその脛を齧り、自らの行いの責任を負ってもらうためのそれじゃないんだ。あくまでも、


『神から見た自身の姿を想起することで自らを客観視する』


ためのものでしかない。


それをわきまえた上で、僕達は行動を開始する。


まずは、僕達を売った<代金>を受け取りそれを数えているタクシー運転手を、安和が足払いで倒し、そのまま後ろ手に極めて、


「いっっ……!?」


悲鳴を上げる暇も与えず僕が持っていた結索バンドで手と足を拘束。それを逆エビ反りの形で繋いで身動きを取れなくする。


この間、一秒強。


「え……?」


管理事務所にいてタクシー運転手に代金を払った男と、もう一人の男は僕と悠里が対処し、状況を把握する暇も与えず同様に拘束したのだった。



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