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ショタパパ ミハエルくん  作者: 京衛武百十
第一幕
47/697

何よりの甘露

かつての自分達の<常識>を敢えて否定するからこそ、ミハエルは悠里(ユーリ)安和(アンナ)をこれほどまでに愛らしい子供として育てることができた。


『ダンピールは吸血鬼を憎む』


という常識を否定することで。


そして人間であるアオも、


『人間と吸血鬼とは分かり合えない』


という常識を否定することで、ミハエルと共に悠里と安和が朗らかに育つ環境を作り上げている。


それは、吸血鬼であるミハエルと人間であるアオ双方の勇気と努力によって実現された。どちらか一方だけの忍耐によって成し遂げられたわけじゃない。


セルゲイはそれが嬉しかった。


だからこそ自分もそれに協力したいと思った。


今なお、人間達の中には自分達吸血鬼に対する負の感情が残されていることも事実だ。その事実を認めるからこそ、ミハエルもアオも絶え間なく努力を続ける。こうして悠里と安和を連れて世界を巡るのもその一環だった。


人間よりタフで精神的な成長が早いからこそ、たくさんの事象に触れることで、良いことも悪いことを自らの目で見て経験して、自らを律する基盤とする。


そのための旅でもあった。


「セルゲイも食べないと、溶けちゃうよ」


「うん、そうだね」


安和に促され、セルゲイも超特大パフェを口にした。


広がる甘さは、まさに<幸せの味>だっただろう。


吸血鬼にとっての長年の懸案の一つだった<ダンピール問題>解決の糸口が目の前にある。


その解決に資するために生物学を志したセルゲイにとっては、何よりの甘露だったのかもしれない。




けれど、そうしてセルゲイが幸せを噛み締めている周囲では、三歳くらいにしか見えない幼女と美麗な青年がもりもりと超特大パフェを平らげていく様子に、多くの人間が唖然としていた。


中には、


「Oh My God……」


などと呟く者さえいる。


けれど二人はそんな周囲を意に介さず、見事パフェを食べ切って見せた。


「さすがですね、姫…♡」


セルゲイの賞賛に、安和は、


「ふっふっふ、どうよ…!」


と、大きなお腹を撫でつつ自慢げに胸を張った。


とは言え、吸血鬼は元々、その超常的な身体能力を存分に発揮するために大量のカロリーを摂取することがある。もっとも、ミハエルは普段、そんなに食べないので、必須というわけでもない。エネルギー効率が人間よりもはるかに高いからだ。


しかし同時に、必要とあらば一度に食べて蓄えることもできる。だからこの程度の超特大パフェであれば、食べ切ることは不可能じゃなかった。


さりとて、さすがに安和くらいの幼さでこれは、十分、驚きに値するけれど。



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