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ショタパパ ミハエルくん  作者: 京衛武百十
第四幕
422/697

両親の振る舞い通りに

以前の紫音(しおん)は、両親にそれこそよく似ていた。自分の感情ばかりを優先し、自身が我慢しないことを、他者に我慢させることで成立させようとしていた。


そうだ。自分だけが一方的に感情を爆発させるということは、他者にその分だけ我慢を強いるということだ。どうして自分は我慢しないのに他者に我慢を強いるの? そんなことが通ると本当に思っているの?


実際には通らなかったから、紫音は孤立していた。学校でも嫌われて疎まれていたんだ。


両親の振る舞い通りに振る舞ったら、そうなったんだよ。


けれど今の紫音は、以前に比べればまるで別人のように変わってる。自分の思い通りにならなくてもすぐに癇癪を起こしたりしない。不機嫌にはなっても、感情を爆発させることはなくなってる。


それだけでも大変な成長だと思う。それを覚えたことで、彼は両親とは違う生き方ができるようになった可能性が高い。


ただ実際にそうなれるかどうかは、紫音自身の今後の選択にもよるだろうけれど。




そういう形で、彼については今後も慎重に見守ることにして、夜、(あきら)恵莉花(えりか)秋生(あきお)が、日本に帰ってきた僕達と顔を合わせるために訪れた。


「おかえり~♡」


「おかえり」


「おかえり!」


三人も相変わらず元気そうで何よりだ。


ウェアウルフである(あきら)は今も若々しいし、すでに大学への進学も決まった恵莉花は少し大人びて、秋生も凛々しくなった気がする。


「~♡」


大好きな洸の膝に座ってご機嫌な椿を、


「いいな~……」


安和(アンナ)が羨ましそうに見る。けれど、安和は、渡航中、散々セルゲイに甘えていたからね。そこはわきまえてくれている。ただ、素直な感情としては羨ましいっていうだけだ。


そんな中で、


「恵莉花、合格おめでとう」


僕は改めて、大学への進学を決めた恵莉花にそう声を掛けた。すると彼女は、


「ありがとう」


少し照れくさそうに微笑みながら返した。彼女もこれまで大変な努力を重ねてきた。ダンピールを父に持ち、世間からは、


<未婚の母の母子家庭>


に見えるという環境に生まれついたことで侮られたりもしたそうだけど、さくらもエンディミオンもしっかりと愛してくれていたし、恵莉花自身が努力できる環境を整えてくれていたから頑張れたというのもあると思う。


人間達は、


『親がどうあろうと子供自身が努力すれば這い上がれる』


と言いながら、<未婚の母>や<シングル家庭>を、


『子供のためにならない』


と非難するんだ。それだけでもいかに矛盾した生き物かというのがよく分かるよ。



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