自身の拠り所
「おかえり、お父さん。悠里、安和」
僕達との再会を堪能したアオが、
「久しぶりに一緒に寝よ♡」
と言い出したので、僕も悠里も安和も喜んでその提案を受け入れた。そうして、僕とアオが並んで寝て、悠里は僕の隣に、安和はアオの隣に、という形で一緒のベッドで横になる。
時差ボケの調整の意味も兼ねてるそれだけど、久しぶりのぬくもりに、僕と悠里と安和もすぐに眠りに落ちた。安堵感が眠気をもたらしてくれたんだ。
そうして三時間ほど睡眠を取ると、しっかりとリセットされたことを実感する。
「悠里も安和も、大丈夫かな?」
「うん、問題ない」
「へーき、へーき!」
人間であるアオにはまだ睡眠が必要だからそのまま寝かせておくとして、僕達三人はリビングで改めて半年ぶりの自宅の空気を味わった。
「いやあ、やっぱり自分の家はいいもんですな」
安和が自身の運営するサイトの更新を行いながらしみじみと口にする。
「確かに。よく言われることだけど、自宅の安心感は別格だよね」
悠里も、昆虫をはじめとした生き物達のデータをまとめながらそう応えた。僕も二人の言葉には共感しかない。それはつまり、ここが僕にとっての<自宅>だということ。
これまでいろんなところに住んできたけど、自身が<自宅>と認識しているところに戻ると不思議と気持ちが休まるのは事実だと思う。それがたとえ住み始めてから数ヶ月しか経っていないような自宅でもね。
<自身の拠点>と認識した場所というのは、まさに精神面でも<拠り所>になるんだと実感するよ。
そんな風に久しぶりの我が家を堪能していると、
「ただいま」
玄関の鍵を自ら開けて、椿が学校から帰ってきた。
赤いランドセルを背負った彼女が、
「おかえり! お父さん、悠里、安和!」
満面の笑顔でリビングに駆け込みつつ、僕達を迎えてくれた。
「ただいま、椿」
「ただいま」
「た~らいま~」
毎日のようにビデオ通話越しに顔を合わせてきたから『久しぶり』という印象はあまりないけれど、それでもこうやって直に顔を合わすというのはとても心地好い。
無論それは、家族関係が良好だからという大前提があればこそのものだけどね。
そして椿はランドセルを背負ったまま、僕に抱き付いてきた。アオがたっぷりと甘えさせてはくれていたものの、僕にもやっぱり甘えたかったんだっていうのがすごく分かる。
半年もお預けしてきたから、しっかりと体を預けてくる椿を受け止め、その体温と鼓動と息遣いを僕も感じ取る。
「愛してるよ、椿……」
「うん…私もお父さん大好き……」




