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ショタパパ ミハエルくん  作者: 京衛武百十
第四幕
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あなたを見てますよ

そんな形で欺瞞工作を行いつつ、僕達は人間の社会で生きている。


人権を持たず、人間社会では存在しないことになっている僕達なりの、


<人間社会との折り合い方>


だ。人間を恐怖で支配できていた時代とは違う。本気で対立するなら、お互いに相手を確実に殲滅する気でかからない駄目なんだ。だけどそれをするには、双方にとっても犠牲が大きくなりすぎるから、敢えて踏み込まない。


吸血鬼の存在を承知している各国首脳レベルではそういう形で話し合いがついているそうだ。


要するに核兵器の扱いと同じだよね。


『使えばお互いに大変な被害が出るから使えない。けれどその膠着状態こそが必要だから手放すこともできない』


というね。


そういう緊張状態の中でも、平穏は存在する。先進国では入国した途端に明らかに監視が付いたりもするけど、それは<暗黙の了解>として吸血鬼と人間の間に存在する。何しろ、その<監視役>は、人間に協力してる吸血鬼だったりもするからね。


「こんにちは」


<ヴィットーリオ・エマヌエーレⅡ世のガッレリア>で買い物をしていた時も、顔見知りの<監視者>がいた。吸血鬼の女性だ。向こうもわきまえたもので、笑顔で挨拶してくる。


『あなたを見てますよ』


という意味だね。だけど僕もセルゲイもそれは承知してるから、


「こんにちは」


と当たり前に返す。


そうして買い物を終えてホテルに戻り、


「今日、ガッレリアで挨拶した女性は<監視者>だから、見知っておいた方がいいよ。彼女も吸血鬼だ」


悠里(ユーリ)安和(アンナ)にそう教えておく。


「うん」


「分かった」


二人も素直にそう応えてくれるから助かる。


人間の側にばかり我慢を強いるんじゃなくて、僕達吸血鬼の側も敢えて自分を抑えて、


<人間に監視されているという不利益>


を受け入れる。それがないと関係は成り立たない。そしてそれがあるからこそ、互いに過度な干渉は避けることができる。


これも、悠里や安和に知っておいてほしいことだ。自分ばかりが一方的に利を得ようとすれば、そんな関係は破綻する。


一方的に要求してくる相手もいるけど、それが<ブラフ>なのか本気で自分だけが利を得たいと考えているかも、見抜かないといけない。自分だけが一方的に利を得たいと本気で思っている相手とは、関わっちゃいけないからね。


ちなみに、イタリアをはじめとした西ヨーロッパの多くの国はヴァチカンが実質的に管理してる状態だ。ヴァチカンとも、かつては実質的な戦争状態にあった吸血鬼だけど、今は休戦協定を結んで、お互い、原則不干渉を貫いてる。



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