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ショタパパ ミハエルくん  作者: 京衛武百十
第三幕
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本当に、来てよかったよ

こうしてドゥオーモ(ミラノ大聖堂)の見学を終えた僕達は、そのまま、


<ヴィットーリオ・エマヌエーレⅡ世のガッレリア>


へと進んだ。これは、超有名ブランドのそれをはじめとしたたくさんの店が並んだアーケードだね。


ここも、ガラス天井そのものの造形もそうだし、アーケードを構成する建物も、緻密な彫刻や細工が施された、


<創造に対する狂おしいまでの情熱>


を感じさせるものだ。<ヴィットーリオ・エマヌエーレⅡ世のガッレリア>そのものが<一個の作品>なんだろうな。


その<作品>の中に、世界的にも有名なブランドの店舗が並んでる。


「うお~っ! これよこれ! 滾るわ、痺れるわ~っ!!」


アーケードに入った途端、安和(アンナ)が興奮する。アクセサリーとかにも興味がある彼女にとっては、まさに<宝の山>なんだろうな。


「さすが本物は違う! この空気感! この存在感! これは現場に来ないとやっぱ分からないよね! そそるぅ~っ!!」


そう声を上げながら、


「こっちこっち! これよ!」


セルゲイを促してアーケード内を行ったり来たり。正直、僕と悠里(ユーリ)はまったくついていけなかった。でも、


「でも、昆虫とかを前にした僕とセルゲイの姿も、安和にはこんな風に見えてるんだろうな……」


苦笑いを浮かべながら彼は言う。


確かに、悠里の言うとおりだと僕も感じた。自分の興味のあるものを前にした二人の様子は、本質的にはほとんど同じものだ。だから、自分にとって興味のないものに興奮するその姿を馬鹿にするというのは、違うんだと思う。そういうのは、自身を客観視できていない者の愚行なんじゃないかな。


悠里も安和も、それを分かってくれているから、呆れたような態度も覗かせつつ、面と向かって嘲るようなことはしないんだ。


他人を嘲るような者は、自身も嘲られるからね。


それに、安和自身が言ってたように、


<現場に来ないと分からない空気感や存在感>


もあるし、それに実際に触れることで彼女の創作のプラスになるなら、何よりなんだ。


そして安和は、


「これこれ! ビリっときた!!」


そう言って、店先に展示されていたアクセサリーを、自分のお金で買った。


それは、誰もが知ってるであろう超有名ブランドとは違う、『知る人ぞ知る』という店のものだったけど、彼女にとっては、


『超有名ブランドのだから欲しい』


じゃなくて、彼女の感性に刺さるものが欲しいということだね。


今回のは、日本円にして二万円程度のものでありつつ、


「~♪」


安和はとても満足そうなのだった。


本当に、来てよかったよ。



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