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ショタパパ ミハエルくん  作者: 京衛武百十
第一幕
34/697

僕はそのために

『厳しいことを言われても平気なんだったら、どうして、仕事や学校で厳しいこと言われたストレスを、ネットとかで他人に悪態吐いたり罵詈雑言ぶつけたりして解消しようとすんの? おかしいでしょ。まるっきり耐えられてないじゃん。


赤の他人をサンドバッグにしてストレス解消しなきゃならないとか、<ストレス耐性>とかいうのはどこ行ったのよ!?』


アオはそうやって何度も何度も自分に言い聞かせるから、たとえ嫌なことがあってもまったく無関係な見ず知らずの人間を罵ってストレス解消などしなくても済んでいる。


それでもどうしても発散しなければいけない時には、ミハエルかさくらが聞いてくれる。


そうやって自分が発散しないといけない時に聞いてくれる相手を見付けられているから、見ず知らずの他人に被害を及ぼさない。


だから、悠里(ユーリ)安和(アンナ)椿(つばき)が、どうしても発散しないといけない時には受け止めてあげなければという想いにもなる。


体の成長は三歳くらいで突然ゆっくりになったものの知能や精神の成長はその後も順調な悠里や安和と違い、椿はまったくもって普通の人間だった。


それについてアオは、


『上の二人と比べてはいけない』


のは分かっていながらも、離乳食が始まってだんだんとそれが進むにつれて<遊び食べ>などをし始めると、


『悠里と安和はすぐにちゃんと食べるようになってくれたのに、どうして!?』


などとついつい考えてしまった。


「これが普通なのは分かってる! 分かってるんだけどさ……!」


ミハエルの前でそんな愚痴をこぼしてしまったこともある。


するとミハエルは、


「そうだね。だけど思うに任せなくて苛立ってしまうのも、人間なら無理もないことだと思う。だから僕がいるんだよ。アオのその気持ちを受け止めるのが僕の役目なんだ。僕はそのためにアオの傍にいるんだ」


そう言って彼女を抱き締めてくれる。


そのおかげで、アオは子供達に八つ当たりをせずに済んだ。自分の思うようにならないからって怒鳴って叩いて従わせようとせずに済んだ。


アオが怒鳴って叩いて従わせようとしないから、子供達もそのやり方を学び取らなかった。


実に単純な話。


椿の<遊び食べ>も、開き直って、『汚しても構わない』ということでビニールシートを敷いた上で、いっそオムツ一丁で食事をさせて、食事の後はすぐにお風呂に入って洗ってしまうことにしたら、気が楽になった。


しかもその時のアオの精神状態によって、ミハエルとどちらが椿をお風呂に入れるか食事の片付けをするかは随時交代したけれど。


こうして、悠里も安和も椿も、基本的には朗らかで穏やかな気性の子供に育っていってくれたのだった。



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