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ショタパパ ミハエルくん  作者: 京衛武百十
第一幕
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皮肉なことも

『第三子が人間だったことで人間の産婦人科にかかったらあまりいい気分じゃなかった』


などという皮肉なこともありつつも、第三子、<椿(つばき)>の妊娠も順調で、出産も無事に終えられた。


「いらっしゃい。つばき!」


「かーいい♡」


悠里(ユーリ)安和(アンナ)は、自分達と違って普通の人間として生まれてきた椿(つばき)のことも、ただただ受け入れてくれた。


が、家に帰ってきてからは本当にホッとできたものの、実は、入院中はいろいろと思うところもあったりしたのだ。


その筆頭が、


「第一子って言ってるけど、間違いなく経産婦よね、あの人」


「だよね。初産であんなスムーズなのはおかしい」


みたいなことを、看護師らがこそこそ言っていた点だった。


実は経産婦なのは事実だとはいえ、産婦のプライベートをごちゃごちゃ言うのは、さすがに<プロ>としてどうなのだろう?とは思わずにいられなかった。


さりとて、


『自分は金を払ってるんだから客だ! お客様は神様なんだから丁重に扱え!!』


などと言うつもりもなかったので、聞き流すようにはしていたが。


そもそも、この程度のことは<リスク>として承知していたのもある。


でもまあ、確かに、ああいう態度を取られると『お客様は神様だ!』とは思っていなくても気分が悪いのも事実だとは思う。


それでも、罵倒していいとは思わない。


<批判>と<罵倒>は違うことを知っている以上、わきまえないと子供達に対して示しがつかない。


アオは実感していた。


悠里も安和も、ものすごく自分のことをよく見ていると。


自分の普段の振る舞いを見て、学習していると。


『どうせ赤ん坊だから何も分かっていない』


など、とんでもない。


本当に何も分かっていないのなら、何故、特に教えてもいないことができたりする?


何故、親が使っているものを使いたがったりする?


何故、親の真似をしたりする?


子供は親を見ているのだ。親を見て学んでいるのだ。


言葉遣いを、そして、他人との関わり方を。


親が誰かを怒鳴って威圧して従えようとしていれば、子供もそういうものだと学び取る。


自分より弱い相手のことを見下し侮り虐げていれば、『そういうものだ』と理解してしまう。


だから、親が、相手が子供だからと見下し侮って接していれば、自分より弱い相手、抵抗できない相手にはそうしていいと学び取ってしまう。


そして、


『自分より弱い相手、抵抗できない相手は、見下し侮り威圧して従わせればいい』


と学ばせた上で<人の道>や<道理>を説いても、先に身に付いてしまったものが根幹になるのも道理ではないのか?


何より、親が現実と向き合うことができなければ、子供も現実と向き合う姿勢というものを学べない。


それはむしろ当然のことではないのだろうか?


だからアオは、


『地理的に近いというだけの理由で産婦人科を選んでしまった自分の迂闊さという現実と向かい合うからこそ、少々のことで罵倒したりしない』


のを心掛けていたのだった。



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