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ショタパパ ミハエルくん  作者: 京衛武百十
第二幕
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椿の日常 その3

アオは続ける。


「あの両親と息子の物語は、人間的に未熟だった息子にとって両親が立派過ぎて<理解の外>にあったことが大きな原因だったと思う。息子が両親を理解するには、受け止められるようになるには、<時間>が必要だったんだよ。引きこもってる間の何年間の間に息子も自問自答を繰り返して、自分と両親とを何度も何度も何度も何度も比較検証して、そこに、息子を見捨てなかった両親からのヒントが随時もたらされたことで、彼はゆっくりじっくり考えることができた。


そしてそれができたのは、『両親に見捨てられてない』っていう安心感と信頼があればこそだったと思うんだよ。


ま、うちの場合は、あの両親に比べて私なんてどうしようもない<ダメ人間>だから、椿達にプレッシャーなんて掛けようがなかったから、ああはならないと思うよ。しかもミハエルは確かにとんでもなく立派だけど、ほら、<吸血鬼>っていう致命的な<欠点>があるじゃん? <立派な人>ってことで世間が認知しないから、比較されようもないしさ」


確かに、(くだん)のアニメにおいてその<父親>は、とても人望厚く人気者で誰からも信頼されていた人格者だった。だからこそ息子はそんな父親と自分とを比較してしまって、自身のあまりの矮小さに自我が崩壊する寸前まで追い詰められてしまったようだ。


その点、ミハエルにはそんな<世間の評判>もない。ミハエルの子だからということで比較されたりもしない。そういう意味ではプレッシャーになりようがないのだ。


「そういう意味でも、子供がどんな風になるかは『親に原因がある』のは確かだと思う。でも、あの家族の場合は、それ自体が息子の成長に繋がったじゃん? だからあれは、息子が一皮向けるためには必要な挫折だったんだと思う。


解決の方法も一つじゃないよ。そして、親だって万能でも完璧でもない。


その上で、あの両親は自分の子供を見捨てなかった。見限らなかった。だから乗り越えられた。


そういうことだと思う」


アオの言葉に、椿はなおも、


「もし見捨ててたらどうなってた……?」


素直な疑問をぶつける。


それに対しても、アオは、


「正直、<たられば>については何とも言えないかな。ただ……」


「ただ……?」


「ただ、その場合は、他の誰かに、<自分達が子供を見捨てた結果>の尻拭いをしてもらうことになったのは間違いないと思う。もし、何か<事件>になってたら、何の関係もない赤の他人に被害が及んでたかもしれない。もしそうなってたら、<家庭の問題>じゃ済まなかったよね」


そこに、今度は安和(アンナ)が、


「でも、だからって事件を起こしていいわけじゃないじゃん」


不満そうに言ったのだった。



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