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ショタパパ ミハエルくん  作者: 京衛武百十
第二幕
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恵莉花の日常 その17

千華は言う。


「人間ってマジで謎だよな。自分がやられて嫌なことを他人にはやるんだぜ? それで、自分がやられた時には被害者面するんだ。意味分かんないよ」


明らかに具体的な何かを思い出し、顔をしかめながら。


そんな彼女に、恵莉花(えりか)も応える。


「確かにね。私のお母さんもそれでいつも苦労してる。仕事でさ、クレームとかの処理をしてても胃がやられそうになるって言ってるよ」


「出版社の編集だったよね、エリのお母さん」


「うん」


「ってことは、読者からのクレームかあ。『この展開はおかしい』とか『このキャラは気に入らないから外せ』とか、そんな感じなんだっけ?」


「まあだいたいそんな感じかな。一つ一つはそれほど大したのじゃないんだけど、とにかく数が多いから、編集に届いたメッセージについては、一応は確認しないといけないし、ざっと目を通してるだけでも、精神が弱い人だと吐いちゃうこともあるって。


しかも今は、ネットとかでもいろいろ言われるからさ。中には作家への殺害予告みたいなのもあるし、大変みたい」


「殺害予告とかってよく聞くけど、そんなん、すぐに警察に訴えりゃいいじゃん。そういうヤツなんてバンバン逮捕してもらったらいいよ」


「それが案外、そんな簡単でもないみたい。一回、それっぽいことを書かれたくらいじゃ、それこそよっぽど具体的な内容じゃないとさすがに警察も動いてくれないってさ」


「マジか~。確かにうちの母親とかにも脅迫っぽいのが届いたりするけど、全部が全部、警察沙汰にはできないみたいな話も聞いたな」


「そうなんだよね。『何月何日にどこで誰を殺す』みたいなホントに具体的なのだとマジヤバそうって思ってもらえるみたいでも、具体的な内容じゃなくて、しかも<殺害>の<殺>じゃなくて<あの頃>とかの<頃>って字で『頃す』みたいな書き方だと、一回じゃ無理って言ってた。しつこく何回もってことになったらあれだけど」


「胸糞悪いね。自分が仕事しててそんなことされたらスッゲー嫌な気分になるだろうに決まってんじゃん。それなのに他人にはやるんだよな。何考えてんだよ」


「ホントだよね……うちはお母さんが『そういうのは良くない』ってちゃんと教えてくれたんだけどな……そういうのを教えない親もいるのかな」


「あ~、いるね。うちの親なんか、そんなこと教えてもくれなかったよ。ってか、最後にまともに口きいたのもいつだったっけ? 中学の一年くらいだったかな。でもあたしの場合は、エリがそういうの良くないって教えてくれたじゃん。だからやらないでおこうって思えるんだよ。エリがいなかったら、あたしもヤバかったかもしんない」


千華自身がそう言う通り、彼女は、両親が教えてくれなかったことを、恵莉花から教わっていたのだった。



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